遊休水利権 

~権利の上に眠るものは保護されない~ (第2回)

宇都宮大学名誉教授 

藤原 信

 〔逐条解説〕『河川法解説』(河川法研究会編)大成出版社(1994年)を読んだ。

 河川法第23条(流水の占用の許可)「河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。」

 第23条は、河川の流水の占用について規定しています。 「流水の占用」の定義は、「ある特定の目的のために、その目的を達成するのに必要な限度において、公共用物たる河川の流水を排他的・継続的に使用すること」をいい、流水の量的占用を「水利使用」といい、流水のうちの一定量を取水して使用する権利を「水利権」といいます。

 「水利権」というのは、法律上の呼称ではなく、流水占用権の一形態をさすものです。

 第23条の許可により取得する「水利権」には、

① 安定水利権 

② 豊水水利権

③ 暫定豊水水利権があります。

 このほか、第23条の許可を得たものとみなされる「みなし水利権」としての「慣行水利権」があります。

 明治29(1896)年の旧河川法制定時に、川の水を使用していた者(主として農業用水)で、河川法の許可を受けた者とみなされた場合、これを「慣行水利権」といいます。

 「慣行水利権」には、「内容が不明確」「見直しの機会がない」「取水の記録が残されない」などの問題がありますが、主に灌漑用水として、村落共同体の管理のもと、受益者全員の「総有」という特徴があるので、変更するのは難しいといわれています。

 「安定水利権」というのは「許可水利権」ともいい、ダムなどの水資源開発施設からの補給を受けて、安定的に取水することができます。

 「豊水水利権」というのは、「豊水」(基準渇水流量等を超える余剰水)を取水の対象とする水利権のことをいいますが、河川に年間を通じて確保されていない不安定な流量を取水の対象としているので、原則として許可されません。

 「暫定豊水水利権」というのは「暫定水利権」ともいいます。 安定的な水源は確保されていなくても、水需要が増大するなどの社会的な要請に対して、川に水が余分にある時(豊水時)に限って、『必要な水源確保のための措置を早急に講じること(ダム事業に参画するなど)』を条件に、一次的(暫定的)に許可されるものです。 不安定水利権ともいわれていて、ダムが完成して「許可水利権」になるまでの「つなぎ」です。

 未利用水として「遊休水利権」があります。 「遊休水利権」というのは、「流水の占用の許可を受けながら、その流水の占用を実行していない水利権」のことをいいます。

 「水利権を実行しない者は、権利の上に眠る者である」ばかりでなく、河川の有効な利用を妨げる可能性が大きいので、水利権の存続を主張する正当な権利はありません。

 千葉県の未利用水(遊休水利権)は毎秒2.681立方メートルで、50万人分の水が使われていません。 遊休水利権を転用すれば、暫定水利権の解消は可能です。 「許可水利権を取るために無駄なダム事業に参画する」などという愚行をしないでも済むのです。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://yanbachiba.blog102.fc2.com/tb.php/38-80aa3ec1