「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」に対する意見要旨 

「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」に対する関係住民の意見聴取に参加

 国土交通省関東地方整備局による意見聴取が、11月6、7、8日に、4会場で行われました。
千葉の会からは、5人のメンバーが香取市の会場で、1人が埼玉の会場で、それぞれ意見を述べました。
香取市の会場では、意見発表者は5人のみで、八ッ場ダム推進派の意見発表はありませんでした。
 最終的には、国交大臣が決定しますが、聴取した関係住民の意見が、きちんと反映されることを切に願っています。
 以下は、6人の意見の要旨です。

意見の要旨

 治水・利水において、ダム建設が有効であるという時代は終わりました。原発は安全で経済的であるという「神話」が終わりを告げたように、ダムは頼りになって経済的であるという「神話」も終わりです。今回の「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書」を読んでも「費用対効果」の検証は信用できないと思いました。検討に係った皆さんがこの「費用対効果」の数字的根拠についてどのくらい深く検討されたかはわかりませんが、公表されたものをざっと見ても不思議に思う数字が並んでいます。例えば、費用対効果の項目の内「流水の正常な機能の維持に関する便益」を約139億円と見込んでいますが、アンケート調査対象の50キロメートル圏内には、520,981世帯があるというので約120万人の住民がいると思われますが、1500人に調査用紙を送り648票帰ってきて、有効票が281票であるとの記載があります。139億円を算出する根拠としては信じられない方法です。無理なコスト計算でダムを造るのでは次世代に対して申し訳がありません。

(武笠紀子)




 3月11日を契機として、日本のあり方についての見なおしが必要である。従来の、欲求は全て備える、との発想はかなわなくなった。
 このほど1024兆円を超える国の債務が明らかにされ、国民一人当たり802万円の借金を抱える、とてつもない財政危機の状況にある。
 この背景にありながら、なお八ッ場ダム建設事業は従来の計画を推し進めようとしている。
 ムダで危険ですらある八ッ場ダム建設事業の中で、とくに「新規利水」については、人口が減少に転じた、との国勢調査結果を反映することなく、利水参画者の野放図な積算を、国交省は検証することなく検討報告に取り入れ、大きなムダを作ろうとしている。

 東京電力福島原子力発電所の事故により、国民はわずかな節電の実施によって、原発によらない安全な生活を得られるという実績を積んだ。
利水においても「節水」という行動で、孫子への借金を減らすことが出来る、という利益を得られることに気づき、すでに実行している。
 電力を節電していながら、水を流しっぱなしにする生活を国民は望んではいない。
 
新たな時代における、国民の節水と将来にわたる人口の減少、下流域での地下水の利用(東京都、千葉県のいずれも現状の利水維持)で、新規利水は不要である。
水需要計画を予断無く検証し、八ッ場ダムにとらわれない計画の策定をすべきである。

 すでに6都県は国土省に対し、「完成が遅れた場合、ダム完成の時点でダム参加が不要になっていることも想定される」、と将来において水需給が減少することを認識した意見を表明しているのである。

(村越啓雄)

                  


 予断なき検証という名分には程遠い中身の検討報告(案)について以下のような点を指摘したい。
【洪水調節の施策】利根川流域の治水の基礎となる河川整備計画が策定されていないため、国交省は「整備計画相当の目標流量」なるタームを恣意的に駆使してダムの有効性を強調した。公正な議論の場でこれを行わなかったのは河川法の求める理念と規定に反している。
【新規利水の施策】利水予定者の水需給計画の見直しは必須の要件であったはずにもかかわらず、各利水予定者が需給計画の見直しを行った形跡はない。その前提に立てば“代替案はあり得ない”はずにもかかわらず、唖然とするような代替案を提示した検討報告書の意義に疑問を表明せざるを得ない。
【目的別の総合評価】洪水調節、新規利水および流水機能の維持について対策案を抽出、対応した複数の評価軸にそって評価がなされた。検証要領細目によって評価の最大眼目は“維持管理費も含めた上で建設コストを最重視”するとした。評価項目の個別中身は膨大なもので短期間の検証作業ではダム案に比して劣位の判定はむしろ当然。予断なき検証の本来の姿は、対策案としてゼロ・オプション(ダム建設を行わない)を含むべきであった。その前提として「整備計画相当の目標流量」、「利水予定者の水需給計画」の予断なき検証も行われるべきであった。
【費用対効果の検討】2010年10月、会計検査院がダム建設の費用対効果について問題点を指摘した。今回の検証はその指摘に適正に対応したものであったのか、質問を兼ねて提起しておきたい。
【総括的な意見】①検討書作成過程で国交省河川局長から日本学術会議会長宛てに「河川流出モデル・基本高水の検証に関する学術的評価について」依頼があり(2011年1月)、その結果は公表された(2011年9月)。その経過のなかで、学術会議は河川管理の指標となる流量推定の不確実性に触れ、より合理的な河川計画の手法確立、情報の共有、合意形成を図るための計画形成を要請している。その事実に十分な留意をお願いする。②八ツ場ダムが建設されたとしても利根川の河川整備基本方針(2006)による限り、さらに追加のダム建設を想定しなければならないことを知った。これ以上のダム建設が事実上構想できないのであるならば、河川環境の実態に即した河川整備の基本方針について関係諸団体・機関・流域住民との議論を行うことを要請する。③ダム建設が止まっても環境破壊の爪痕を記した自然が残る。地域にとどまっている住民の皆さんの生活基盤再建のために、検討中の支援法案と併せて、「利根川・荒川水源地域対策基金」が使われることを求めたい。

このような公共事業が再度繰り返されないことを切に願う。  

(坂倉 敏雅)




 関東地方整備局が発表した八ツ場ダム検証結果は、「予断なき検証」という触れ込みとは180度逆の、「予断だらけの検証」である。ダムが計画された60年前とは異なり、1都5県の水需要は減少の一途をたどっている。まず水需要を精査することから始めなければならないのに、今回の検証はこれを全く無視。一足飛びに「水は不足している」という前提からスタートしている。従って、「では、どこから水を引いてくるのか?富士川か?」という荒唐無稽な答が導き出されるのである。治水にしても、八ツ場ダムの流量カット効果はハ斗島地点でわずか13センチの水位低下しかない、という市民団体の指摘に、国は反論するどころか黙認している状況。それにも関わらず、過大な洪水調節効果を提示するとは、非科学的としか言えない。真の洪水対策は、利根川流域の堤防補強と河道改修であることは論をまたない。国は検証の抜本的見直しを行うべきである。

(大野博美)




 八ッ場ダムは構想から60年になるにもかかわらず、今だ完成には程遠く、その必要性が問われ続けている。この間、ダム予定地の地域社会、またかけがえのない自然が破壊されてきた。そして、八ッ場ダム計画の杜撰さにより、2回、3回と工期延長・事業費の増額が繰り返されている。
 このような情勢から、民主党政権による「八ッ場ダム中止」宣言から「八ッ場ダムの予断なき検証」が約束され、私たちは注視してきた。しかし、この度出された検証結果は、科学性も客観性もなく、ただひたすら「八場ダム建設」だけが目的であり、日本の公共事業の悪しき慣習である利権構造を守る利害調整に偏ったものであることがうかがわれる。
以下、検証結果について述べる。

○ この検証の目的は「なるべくダムに頼らない治水(利水)への政策転換」であったはずが、これまでダムを推進してきた国交省関東地方整備局自らが、その委員の人選、資料提出、会議の非公開決定などを行ってきたことを見れば明らかなように、「八ッ場ダムが必要である」の結論を導き出すシステムを最初からつくってきたものである。これは国民を欺く行為であり、本来の理念から程遠いものである。
○ 利水については、現実の水需要の実績と今後の人口減等、水需要の減少状況にあえて目をつぶり、利水予定者(都県の思惑)の過大な水需要予測をそのまま認めている。これを前提に、富士川からの導水事業1兆3千億円等非現実的な案との比較は、科学的な検証とは程遠いものである。
○ 治水に関しては、利水と同じように代替案の事業費が八ッ場ダム事業の残りの費用と比較して、跳ね上がるように操作し、八ッ場ダムの効果を過大に評価している。利根川の治水について、カスリーン台風並みの豪雨に対して、八ッ場ダムの洪水調節効果が全くないことを、国交省自ら2008年6月に認めている。検証会議は、国の出した資料が正確であるかの検証もなく、ただ国交省の言い分をうのみにした机上の議論でしかなかったのではないか。日本学術会議が出した結論の説明会でも明らかであった。
○ ダム本体や周辺地域で懸念されている地盤の脆弱さ、ダム湖湛水後の地すべりの危険性への対応など、検証がされていない。地すべり対策が不充分であることは、多くの専門家から出されているにもかかわらず、20数か所に止まっている。
 
 2009年9月、国交省の「今後の治水のあり方を考える有識者会議」の中間取りまとめでは「わが国は現在、人口の減少、少子高齢化、莫大な財政赤字という不安定要因に直面しており、この現状を踏まえれば、税金の使い方を大きく変えなければならないという認識のもと『できるだけダムに頼らない治水(利水)への政策転換を進める』」としている。このようにダム検証の目的は明確であったにもかかわらず、実際に行われた検証は、もっぱら八ッ場ダム建設にゴーサインを出すための検証作業でしかなかった。
 今の日本社会は、中間取りまとめでいう三つの大きな不安要因だけでなく、本年3月11日の大震災とそれによる原発事故により、国民は先行きの見えない混乱のただ中にいる。これ以上次の世代に負の遺産を残してはならない。このことを肝に銘じて行動することが、今の世代の責任ではないか。
 従って、これらのことを踏まえ、真に科学的・客観的な検証を可能とする第三者機関を設置し、公開の場で八ッ場ダム事業の公正な検証を実施することを強く要望する。

(中村春子)




1.検証のあり方について
 初めに、今回の検証のあり方についてです。検証主体がダムを推進してきた国交省自身であること、従来の河川行政に異論を唱えない学者が非公開の場で検証のベースをつくったことなど、当初から八ッ場ダムありきの検証作業であったことに異議があります。本来、有識者会議で話し合うべきテーマは「なるべくダムに頼らない治水政策」であり、前原元大臣の「八ッ場ダム中止宣言」を受けた「予断なき検証」を行うことが目的であるべきでした。しかし、有識者会議ではダムの必要性を科学的客観的なデータに基づき検証するのではなく、ダムの残事業費と代替案のコスト比較をし、八ッ場ダムが最も有利と結論づけたのです。これでは「予断なき検証」など行われるはずがありません。目的と手段が歪められ、ダムありきの結論を導き出すためのアリバイづくりが行われたと断じざるを得ません。福島原発事故により、「原子力ムラ」の存在が顕在化したように、この度の検証結果で「河川ムラ」ともいうべきダム利益共同体の結束が示されたのではないでしょうか。「予断なき検証」は行われていません。

2.流域住民を無視した非現実的な対策案
 第二に、今回の検証がいかに流域住民を無視した机上の空論であったかという点についてです。利水面においては、実績とかけ離れた利水予定者の過大な水需要予測を見直すことなくそのまま容認しており、これではまったく意味がありません。千葉県は2008年9月に策定した長期水需給計画に基づくデータをあげていますが、概ね2005年度までの実績をベースとした予測です。すでに水需要は漸減傾向にあり、最新データに基づき、水需要の精査をすることなど容易にできる時代です。それを行わなかったのは、行政の不作為と言わざるを得ません。また、ダムの開発予定水量である毎秒22㎥を前提とし、代替案を検討しています。国交省は、藤原ダムの掘削や富士川からの導水、渋川市周辺での地下水取水等々の代替案は大幅な法改正や河川行政のシステム変更を伴わない範囲であらゆる方法を模索した結果であると説明しています。しかし、富士川からの導水路は概算で1兆円以上かかり、非現実的です。残事業費が1千億円程度の八ッ場ダムが有利と結論づけるための対案に過ぎず、机上の空論です。都県側も5月24日に開かれた国と6都県の「検討の場」において、これらの代替案を「荒唐無稽だ」「実現性に乏しい」と一斉に批判し、建設を前提とした再検証作業の早期終結を強く要望しています。多額の負担金を出してきた関係都県は現実的な対応を求めています。その意味でもダム中止に伴う補償法を制定しダム建設の場合と同程度の水利権を都県に分配する、暫定水利権の安定化の検討がなぜ提案されなかったのでしょうか。既存の枠組みでの検討を国交省が主導するのではなく、水利権許可制度の改善など、現実的で利水者のメリットにつながる代替案を議論すべきと考えます。
 次に治水面については、河川整備基本計画策定時の目標流量毎秒15000㎥を無視し、新たに河川整備基本計画相当量17000㎥を持ち出して八ッ場ダムを必要不可欠と位置づけました。整備計画時の目標流量15000㎥を2000㎥に引き上げ、ダム等による洪水調節量を2000㎥から3000㎥に、河道対応流量も13000㎥から14000㎥に引き上げました。しかし、これらについての科学的根拠が示されていません。ダムありきを前提に恣意的操作が行われたことは明らかです。2006年2月、国交省は河川整備基本方針を発表。同年12月からより具体的な治水対策である河川整備基本計画の策定作業を開始し、公聴会も開かれました。私は5年前の当時、埼玉での全体公聴会の場において、印旛沼を経由する新たな利根川放水路計画がいかに非現実的か、流域の治水対策の現状について、住民の立場から公述しました。しかし、その後、この基本計画策定の手続は、理由不明のまま中断しています。5年前に公述した時と今回の意見聴取にあたっての前提が大きく異なるのは、整合性がなく納得できません。97年に改正した河川法では「住民参加」と「環境保全」の新たな視点が盛り込まれました。その法の精神に沿って、河川整備基本計画の策定が進められるべきです。今回の検証結果についての意見聴取を既成事実とし、河川法に規定された必要な手続きを踏むことなく利根川水系河川整備計画の内容を決めることは断じて認められません。一方、千葉県も国にダムの早期完成を求めるだけであり、八ッ場ダムが本県下流域の治水対策としてどのような効果があるのか、具体的な検証を行っていません。利根川上流の吾妻川流域にはダムがないからバランスよく配置する必要があるとの国の言い分をそのまま認め、下流域でたとえ1センチでも水位を下げることが重要との認識です。500億円もの県負担に照らして費用対効果はどうなのかなど、関心外ですべて国にお任せの姿勢です。いったい誰の何のための公共事業なのでしょうか。

3.工期延長と事業費増額について
 最後に、工期延長と事業費増額についてです。ダム本体工事に着手した場合、完成までの期間は87カ月(7年3か月)と示されています。これまで工期の遅れは政権交代の中止方針によって説明されてきましたが、実際は付帯工事である鉄道や国道の工事の遅れが原因です。私もこれまで幾度となくダム建設予定地を訪れ、工事の進捗状況について説明を受けてきました。計画では2011年3月末完成予定ですが、鉄道の新駅付近の用地買収が難航し、見通しが立っていません。また、工期の点検結果を見ると、ダム本体工事完成後の試験湛水開始から6か月後に供用開始となっています。しかし、現地調査を行った専門家は試験湛水後に地すべりが起こり、その対応策に時間も費用もかかると指摘しています。実際、滝沢ダムは本体工事着手から事業完了まで12年1カ月、宮が瀬ダムは14年5か月かかっています。また、都県側の一番の関心事である事業費増額については、点検結果で149億3千万円の増額が示されました。この点についての都県側の追及に対し、「あくまでも代替案と比較するための仮置きの数字であると理解してほしい」と基本計画変更の議論を避けています。しかし、都県側は第3回の幹事会において「増額負担はまったく支払う理由はない、そのことは議論の余地はないので、一切払わない」と言明しています。千葉県の利水負担金は昨年度までに261億2千万円、建設負担金は165億8千万円、合計427億円になります。千葉県も震災の復旧復興予算が嵩み、今年度180億円の財源不足が予測されています。工期も事業費も見通しが立たない八ッ場ダム事業にこれ以上、巨額の税金を投入する余裕はまったくありません。何よりも急ぐべきことはダム計画によって60年間、翻弄されてきた現地住民の方々の生活再建です。国は早急に法案成立に着手し、八ッ場ダムは完全中止すべきです。東日本大震災と福島原発事故の経験を踏まえ、私たちは従来の公共事業のあり方や価値観を見直す選択に迫られています。今回の検証についても机上の空論を議論するのではなく、流域の住民生活の視点から現実的で真に実効性のある対策を議論すべきです。そのためにダム推進に異論を持つ科学者や流域住民の参加による公開の場での意見交換会、対話集会など検証プロセスに盛り込み、法規定に基づく再検証を強く求めます。

(入江晶子)

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