STOP八ッ場通信13号P2【山を動かした力】  

STOP八ッ場通信13号

「山を動かした力」
関良基 (拓殖大学教員) さん

 昨年、まさに「動かざること山の如し」であった利根川の基本高水「2万2000m3/秒」が音を立てて崩れた。馬淵澄夫前国交大臣は昨年11月5日の記者会見で、基本高水を含む河川整備基本方針を定めた2005年の審議会のあり方が、「大変ずさん」であったとして次のように述べたのである。

(前略)結果から見れば、「22,000トンありき」の検討を行ったということであります。(中略)
 この件につきましては、国土交通省、当時でありますが、大変ずさんな報告をしたと、このように思っておりまして、率直に所管する大臣としてお詫びを申し上げます。(中略)
 私は改めて、従来の流出計算モデルにとらわれることなく、定数の設定、あるいはゼロベースにおけるモデルの検証を行って基本高水について検証するよう河川局に指示をいたしました。

八ッ場住民訴訟提訴から6年。千葉の会はじめ1都5県の市民活動の積み重ねがついに山を動かしたと言ってよいだろう。私自身も住民訴訟の原告側弁護団の依頼を受けて再計算のお手伝いをさせていただいたのだが、まさに市民に動かされた側であった。
この「基本高水疑惑」の経緯を逐一報道してきた『東京新聞』の篠ケ瀬祐司記者は、年末の12月28日付け朝刊の「メディア観望」で、「基本高水の再検証」を求めて奮闘してきた市民活動の成果を以下のように総括していた。

(前略)基本高水の再計算を行うように国を導いたのは、市民の力だ。(中略)
 市民らは情報公開請求を繰り返し、基本高水の計算が、上流の森林地帯を裸地と同じような保水力の設定で行われていることや、その後の国交省の検証作業も、保水力を示す係数を都合よく変えていたことなどを突き止めた。馬淵国交相は今秋、検証の不適切さを認め、基本高水再計算という異例の決定を下さざるを得なかった。 

 篠ケ瀬記者は謙遜しているが、「市民の力」に加えメディアの力も大きかった。「基本高水の計算は正しい」とする国の主張を鵜呑みにせず、「基本高水は過大」とする市民の側の検証を正しく報道してきたのは東京新聞特別報道部であった。
 さらに政治の活躍も大きかった。以前からこの問題で精力的に動いてきた「1都5県議員の会」に加え、国会議員も動いてくれた。市民の側の検証計算に真摯に耳を傾け、国会で質問を行ったのは自民党の河野太郎議員であった。馬淵澄夫大臣の決定はそれに応えたものだった。さらに共産党の穀田恵二議員や社民党の中島隆利議員なども国会質問や質問趣意書などでこの問題を追及してくれた。まさに与野党を超えた超党派である。
 もちろん、4600億円もの血税を投入するダム事業の前提となる計算が正しいのか正しくないのかという問題は、政治イデオロギーの対立とは無関係なのである。政治がダメ、ダメと言われ暗いニュースが多かった中で、官僚による恣意的操作がまかり通っていた基本高水問題は、市民とメディアと政治の三者連携がうまく機能して前進した一年だった。
 国交大臣が交代し、暗雲が広がっているようにも見えるが、計算を誤魔化してまで血税を詐取している国交省に軍配が上がるほど、世の中腐ってはいないだろう。今年も頑張りましょう。

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