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八ッ場ダム:地元住民、広がる不信感…中止棚上げで 

毎日新聞 2010年11月6日 21時42分(最終更新 11月7日 0時57分)より

八ッ場ダム:地元住民、広がる不信感…中止棚上げで

 中止という予断を持たずに再検証します--。群馬県長野原町の八ッ場ダム建設予定地を初視察した馬淵澄夫国土交通相は、民主党が昨夏の衆院選でマニフェスト(政権公約)に掲げた「中止」方針をあっさり棚上げした。半世紀以上にわたる計画は09年の政権交代で中止となり、住民と関係自治体は翻弄(ほんろう)され続けてきた。「建設再開が決まったわけではない」「国の対応は二転三転してきたので信用できない」。ダム推進派からも冷ややかな声が聞かれ、建設中止を求めてきた反対派にも不信感が広がった。

 「民主党はしっちゃかめっちゃか」。ダム推進派で、所有する田んぼが水没予定の自動車修理業、篠原箭(すすむ)さん(64)は国交相発言に、さらに不信感を募らせた。

 「下流のためと思ってダムに賛成してきたが、国の対応は二転三転。1年後の再検証結果もどうなるか分からない。住民はどうしたらいいのか」

 水没予定地の川原湯温泉で旅館を営む豊田明美さん(45)は、再検証の期限が「来年秋」に決まったことは「ようやく先が見えた。旅館にとっては闇の中の光」と評価した。しかし「国がこれまで何度も発言を翻してきたため、国と地元との信頼関係が壊れている」とも語り、「足並みをそろえて生活再建できるのかが一番の不安」と訴えた。客足が遠のき、旅館は年内に休業する予定だ。

 一方、地元でダム反対を訴えてきた豊田武夫さん(59)は「再検証すればダムの不要性はおのずと分かるはずだ。多少の言葉のぶれに一喜一憂してもしようがない」と話した。

 関係自治体は建設推進を国に求めており、地元群馬の大澤正明知事は「ダムなしの生活再建は考えていない。地元の意向を踏まえて検討してほしい」と歓迎した。長野原町の高山欣也町長も「(中止の方針棚上げは)心強く感じている。住民との話し合いは、要請してもらえれば実現したい」と国に歩み寄る姿勢を見せた。

 ◇今後を見据え、表現で譲歩か

 馬淵国交相が「中止の方向性という言葉には言及しない」と発言した背景には、前原誠司前国交相が「予断を持たずに再検証を行う」と言いながら「中止の方向性は変わらない」とも口にした結果、地元から「中止ありきの予断を抱いているではないか」と反発を招き、こう着状態に陥ったことがある。

 馬淵国交相の発言は「中止」を掲げたマニフェストからの後退とも受け取れるが、マニフェストを撤回するとは発言しなかった。再検証のメドを示し、予断を持っていない姿勢を見せて再検証のテーブルについてもらうために表現で一定の譲歩をしたが、マニフェストと政権交代後の国交行政の流れを変更したことにもならず、与党・民主党内への説明も付く--。「中止方針の棚上げ」と受け取れる発言にはそんな計算がありそうだ。

 また、国交省はこれまで、中止の方向性を示しつつも八ッ場ダムを再検証の枠組みに入れることで事態の打開を目指した。しかし、受益者である1都5県の知事は、再検証のスケジュールを明示するまで負担金の支払いを留保すると通告、国交省は「このままでは事業資金がショートしかねない」との危機感を募らせていた。馬淵国交相は再検証のメドを来年秋と提示。国交省幹部は「負担金支払いへの理解が得られる」とみる。

 埼玉県の上田清司知事は6日、熊谷市内で記者団に対し、「評価したい。方向さえしっかりみさせてもらえれば、当然出すべきものは出す」と述べ、負担金の拠出を前向きに検討する考えを示した。近く1都5県の知事で負担金の扱いを含めて協議する。【奥山はるな、鳥井真平、石原聖】

◇八ッ場ダム計画を巡る主な経過◇
1952年 建設省が予定地の調査開始
 85年 群馬県知事と長野原町長が生活再建案で覚書締結
 86年 建設省が00年度完成とする基本計画(法定計画)を提示
 88年 建設省が現地調査開始
 94年 付帯工事に着手
 95年 旧吾妻町が長野原町に続き協定書締結。ダム建設本格化
2001年 1回目の基本計画変更。工期を10年延長、10年度完成に
 04年 2回目の基本計画変更。総事業費が約2110億円から約4600億円に倍増
 07年 水没地区の代替地分譲始まる
 08年 3回目の基本計画変更。工期をさらに5年延長
 09年
 1月 国交省が本体工事の入札を公告
 9月 国交省が本体工事の入札延期▽鳩山内閣発足、前原誠司国交相が建設中止を明言
 10月 前原国交相が、見直しを進める143ダムの一つとして「予断を持たずに再検証」と表明
 10年
 1月 地元住民と前原国交相が初の意見交換会
 2月 関係6都県が国にダム建設を迫り、独自に本体工事費など計211億円を10年度予算案に計上
 6月 水没予定地に十字架のようにそびえ有名になった「湖面2号橋」の橋げた接続
 7月 関係6都県が10年度の建設負担金の支払い留保を国交省に伝える
 10月 国と関係6都県などがダムの必要性を再検証する「検証の場」初会合
 11月 馬淵澄夫国交相がダム建設予定地を初視察し「中止の方向性」撤回


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