検証ウソ or ホント?【みんなの八ッ場 パーフェクトガイド】 

八ッ場ダムの建設中止と生活再建への取り組みについて
2009年9月16日
八ッ場ダムをストップさせる千葉の会

 八ッ場ダム事業の中止をマニュフェストにうたった民主党が国民の圧倒的な支持を受け、民主党を中心とした新政権が9月16日から動きだしました。
 
 この情勢の中で国土建設省や、協調して八ッ場ダムを推進してきた自治体の首長、現地住民の一部の方々から、ダムの完成を求める意見が出されています。
 この意見には、事実に基づかないもの、事実を隠しているものなどが見られ、報道の中にも同様な情報を主張している箇所が見られます。
 これらについて正しい情報を明らかにして皆さんのご理解をいただき、ダムによらない治水、利水を確立させること。
 また、地元住民の皆さんの生活再建と地域振興策について提言し、過去50年にわたって国の政策に翻弄されてきた地元住民の皆さんの痛みを共有し、住民同士の視点から共に追求していくことを願って取りまとめたものです。
 多くの皆さんのご利用を願っています
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 八ッ場ダムについて流されている情報の誤り

各都県知事や国交省から主に次のような情報が流されていますが、いずれも事実に基づくものではありません。それぞれの誤りは別紙のとおりです。
  1. 八ッ場ダム事業は継続したよりも中止した方が高くつく。
  2. 八ッ場ダムはすでに7割もできているので、今さらストップできない。
  3. 八ッ場ダムの暫定水利権がダム中止に伴って失われる。
  4. 大渇水到来のために八ッ場ダムが必要。
  5. 八ッ場ダムは利根川の治水対策として重要。
  6. さらに、八ッ場ダムの中止に対して地元の町とダム予定地から強い反発が出されていますので、そのことを踏まえて考慮すべき事実と今後取り組むべきことを「Ⅵ.ダム予定地の生活再建と地域の再生について」として別紙のとおり、整理しました。



 I. 八ッ場ダムを中止した方が高くつくという話の誤り

1 八ッ場ダムを中止した方がはるかに安上がり
(1) 事業費の再増額は必至

八ッ場ダム建設事業の事業費は4600億円(水源地域対策特別措置法事業と水源地域対策基金事業も含めると、約5900億円)とされているが、ダム事業を継続すれば、ダム完成までに事業費の大幅増額は必至である。増額要因としては(3ページ参照)、東京電力への多額の減電補償(吾妻川の大半を取水している5つの発電所への発電減少分の補償)が残されていること、貯水池予定地の周辺で地すべりの危険性がある場所が22箇所もあるため、大滝ダムや滝沢ダムの例に見るように、新たな地すべり対策費が膨れ上がる可能性がきわめて高いこと、関連事業の工事進捗率がまだ非常に低く、完成までにかなりの追加予算が必要となる可能性が高いことなどがある。

(2) 継続した場合と中止した場合の今後の事業費の比較
八ッ場ダム事業を継続した場合は上述の要因によって1000億円程度の事業費増額が必要となると予想される。仮に1000億円とすれば、八ッ場ダム建設事業の今後の公金支出額は残事業費1390億円+1000億円=2390億円となる。
一方、中止した場合の必要事業費は国交省が示す生活関連の残事業費770億円程度である。
したがって、中止した方が差引き1620億円も公金支出を減らすことができる。
みんなの八ッ場図版1
2 利水負担金の返還について
(1) 利水負担金についての正しい話
国交省は、ダムを中止すれば、利水予定者が今までに負担した約1460億円を返還しなければならないとし、都県知事もそれに呼応して返還を要求すると主張しているが、二つの点でこの話は間違っている。
第一はこの約1460億円の中には水道事業および工業用水道事業への国庫補助金(厚生労働省と経済産業省からの補助金)が含まれており、それを除くと、6割の約890億円である。利水負担金の問題は国庫補助金も含めた数字が罷り通って話が一層大きくなっている。
第二に、特定多目的ダム法および施行令ではダム事業者が自らダムを中止した場合は想定されておらず、利水予定者への全額返還は明記されていないことであるから、利水負担金をどのように取り扱うかは今後の検討課題である。不要なダム建設を推進してきた責任は利水予定者側にもあり、さらに、今回の総選挙で多数の有権者が八ッ場ダムの中止を求めたのに、あえて返還を求めることは民意に反することでもある。
みんなの八ッ場図版2
(2) 利水負担金を仮に返還した場合は?
ダムを中止して利水負担金を仮に利水予定者に返還した場合、今後の国費支出額は次のようになる。
国交省は今後の国費支出額を利水負担金返還額約1460億円+生活関連の残事業費約770億円=約2230億円としているが、1460億円には上述の国庫補助金が含まれているから、国交省の数字は誤りである。
正しくは、利水負担金返還額約890億円+生活関連の残事業費約770億円=約1660億円が今後の国費支出額である。
利水負担金を返還しても、事業を継続した場合の公金支出額約2390億円より約730億円小さい金額になる。
みんなの八ッ場図版3
(3)利水者負担金の返還は公会計内の話
しかし、利水者負担金の返還は公会計内での国と地方の負担割合のことであって、公金支出額の総額、すなわち、国民の負担額が変わるわけではないから、本質的な問題ではない、
1で述べたとおり、ダムを中止した方が、公金支出額がはるかに小さくなるのであって、広い視点から見て無駄な公費の支出をなくすため、ダムの中止が必要である。
治水分の直轄負担金について
関係都県は利水負担金の他に八ッ場ダム事業の治水分として平成20年度までに526億円負担してきているが、これは河川法に基づく直轄事業負担金であって (ダムの場合は3割負担)、返還するような法的な根拠は何もないから、返還を求められるものではない。これは橋下徹大阪府知事が問題視した直轄事業負担金 である。今まで道路等などの直轄公共事業が中止されても返還されたことはなく、八ッ場ダムの中止についてもしこの返還の話が出れば、今までに中止した直轄 公共事業の全部に波及することになるから、国交省はこのことには触れることはできない。

貯水域周辺での地すべりの危険性
八ッ場ダムの貯水池周辺で地すべりの危険性があるところは22ヵ所。
地すべり対策が実施されるのはわずか3ヵ所だけで,簡易な対策。
八ッ場ダム貯水域の周辺、右の方はダムサイトみんなの八ッ場図版4  
○が地すべりの危険性があるところを示す。

大滝ダム(奈良県・吉野川、国交省)
  • 2002年8月にダム堤体が完成
  • 試験湛水で白屋地区で地割れが発生し、38戸が全戸移転
  • その後も大滝地区と迫地区でも地すべりの危険性が判明
  • 現在、対策工事中
  • 地すべり対策の工事費308億円
  • 現段階での完成予定 2013年3月
東電への巨額の減電補償
八ッ場ダムに水を貯めるためには、吾妻川にある東京電力㈱の水力発電所への送水量を大幅に減らす必要がある。
⇒ 巨額の減電補償(数百億円)が必要(減電量の試算結果年間22,400万kWH)
八ッ場ダム予定地より下流にある吾妻川の発電所の合計最大出力97,400kW
吾妻川の水力発電所みんなの八ッ場図版5
八ッ場ダムの県営発電所の計画
発電力:最大11,400kW
年間発電量:4,099万kWH
八ッ場ダムによって吾妻川の全発電量は大幅に減少する。

 Ⅱ 八ッ場ダムはすでに7割もできているという話の誤りについて

1 工事の進捗は大幅に遅れている
7割というのは、八ッ場ダム建設事業の事業費4600億円のうち、7割が平成20年度までに使われたということであって、工事の進捗率とは全く別物である。本体工事は未着手である。関連事業のうち、規模が大きいものは付替国道、付替県道、付替鉄道、代替地造成であるが、平成20年度末の完成部分の割合はそれぞれ6%、2%、75%、10%であり、まだまだ多くの工事が残されている。付替鉄道は75%まで行っているとはいえ、新・川原湯温泉駅付近は用地未買収のところがあって、工事の大半はこれからであるから、完成までの道のりは遠い。
みんなの八ッ場図版6 みんなの八ッ場図版7

2 完成が平成27年度末よりも大幅に遅れることは必至
八ッ場ダムの完成予定は平成27年度末で、今年度後半から本体工事着手となっているが、実際の完成は大幅に遅れる可能性が高い。八ッ場ダムの場合、ダムサイト予定地を国道と鉄道が通過しているので、付替国道、付替鉄道を完成させ、現国道と現鉄道を廃止しないと、本格的なダム本体工事をはじめることができない。この付替国道、付替鉄道の工事が用地買収や地質の問題で大幅に遅れているので、事業が継続されても、ダムの完成は平成27年度末より大分先になることは確実である。
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みんなの八ッ場図版8
 Ⅲ 八ッ場ダムの暫定水利権がダム中止に伴って失われるという話の誤り

1 八ッ場ダムの暫定水利権は長年の取水実績があり、支障を来たしたことがない。
八ッ場ダムの暫定水利権とは、八ッ場ダムの先取りの水利権として暫定的に許可された水利権のことで、そのほとんどを占めるのが埼玉県や群馬県などの農業用水転用水利権の冬期の取水である。農業用水を転用した水利権であるから、冬期は権利がないとされ、八ッ場ダム事業への参加で冬期の水利権を得ることが求められている。しかし、これらの農業用水転用水利権は夏期も冬期も長年の取水実績がある。古いものは37年間も取水し続けている。その間、冬期の取水に支障を来たしことがない。

埼玉県の農業用水転用水利権
農業用水合理化事業水利権
(万m3/日)
完成年取水実績
農水合理化一次18.1 197237年
農水合理化二次13.2 198722年
埼玉合口二期31199514年
利根中央事業24.820027年
87.1--- ---

冬期は暫定水利権とされているが、長年の取水実績があって、取水に支障をきたしたことがない。

2 利根川の冬期は取水量が激減するので、水利用の面で余裕がある。
利根川の冬期は夏期よりも流量が少ないが(冬期の晴天日の流量は夏期の6割程度)、農業用水の取水量が激減するので(冬期の都市・農業用水の全取水量は夏期の3割程度、左下の図)、水利用の面でも十分な余裕がある。それを反映して、利根川では冬期の渇水はきわめてまれである。過去において冬期に取水制限が行われたのは平成8年と9年の冬だけである。その取水制限率は10%であって、ほとんど自主節水にとどまっており、生活への影響は皆無であった。平成8、9年当時と比べて現在は首都圏の保有水源が増えていることと、取水量が減少してきていることもあり(右下の図)、八ッ場ダムなどなくても、埼玉県水道等の農業用水転用水利権が冬期の取水を続けることに何の問題もない。
みんなの八ッ場図版9

3 ダム中止後も継続される暫定水利権
今まで数多くのダムが中止されてきている。その中には、中止されたダムの完成を前提とした暫定水利権がそのダムの利水予定者に許可されていたケースがあるが、ダム中止後にその暫定水利権が消失することはなく、そのままの使用が認められている。具体的な例としては、徳島県の細川内ダムや新潟県の清津川ダムがある。両ダムとも国土交通省のダムである。八ッ場ダムの暫定水利権がダム中止後、使用できなくなることは決してない。
細川内ダム(徳島県、国土交通省) 2000年度に中止
暫定水利権は那賀町工業用水道で、現在も継続使用
清津川ダム(新潟県、国土交通省) 2002年度に中止
暫定水利権は周辺9市町村の水道で、ダム中止後も継続使用。
その後、市町村合併により、水源の融通がなされ、2006年度までに清津川ダムの暫定水利権は解消されている。

4 埼玉県民の過重負担
埼玉県水道を例にとれば、農業用水転用水利権の確保のため、すでに多額の費用を負担している。利根中央事業の場合は1㎥/秒あたりの負担額が125億円にもなっている。八ッ場ダムの非かんがい期(冬期)の水利権に対する同県の負担額は約74億円であるから、夏期と冬期それぞれ水利権を得るということで、約200億円の負担になっている。
一方、八ッ場ダムで通年の水利権を得る茨城県水道の1㎥/秒あたりの負担額は131億円であるから。埼玉県民はその1.5倍以上の負担をさせられつつある。
みんなの八ッ場図版10
5 水利権の許可権をダム建設推進の手段に使う国交省
上述のとおり、八ッ場ダムの暫定水利権は、八ッ場ダムがなくても取水し続けることが可能なのであるから、安定水利権として認めればよいのだが、利根川の水利権許可権者は国交省で、八ッ場ダム建設の事業者も同じ国交省である。国交省は水利権許可権をダム事業推進の手段に使っていると言ってよい。実態に合わない非合理的な水利権許可行政を根本から改める必要がある。
 Ⅳ 大渇水到来のために八ッ場ダムが必要だという話の誤り

大渇水到来の話は八ッ場ダムには直結せず
石原慎太郎東京都知事は「異常気象が深刻化しており、日本だって、いつ干ばつにさらされるか分からない」から八ッ場ダムを必要だと語っているが、これは八ッ場ダムについての知識を持たないことによる発言である。
八ッ場ダムはそれほど大きなダムではなく、夏期は洪水調節のため、水位を下げるので、利水容量は2500万㎥しかない。一方、利根川水系にはすでに11基のダムがあって、それらの夏期利水容量は合計では4億3329万㎥あるから、八ッ場ダムができても、約5%増えるだけである。
渇水が起きることがあるのはほとんど夏期であるから、夏期の利水容量が重要であるが、八ッ場ダムはその容量が小さいダムなのである。
大渇水が来るという話自体が現実性のない話であるが、そのことはさておき、八ッ場ダムが完成しても、利根川水系ダムの状況が現状とそれほど変わるわけではないから、都知事の発言は完全にピント外れである。
みんなの八ッ場図版11
 Ⅴ 八ッ場ダムは利根川の治水対策として重要という話の誤り

 1 八ッ場ダムの治水効果はわずかで、治水対策として意味を持たない。
(1) カスリーン台風再来時の八ッ場ダムの治水効果はゼロ

利根川の治水計画のベースになっているのは1947年のカスリーン台風洪水であるが、同台風の再来に対して八ッ場ダムの治水効果がゼロであることが国土交通省の計算によって明らかになっている。2008年6月6日の政府答弁書は、カスリーン台風再来時の八斗島地点(群馬県伊勢崎市にある利根川の治水基準点)において、八ッ場ダムの治水効果がまったくないことを明らかにした。これは八ッ場ダム予定地上流域の雨の降り方が利根川本川流域と異なっていたからであるが、他の大きな洪水でもよく見られる現象である。
みんなの八ッ場図版12

(2) 過去50年間で最大の洪水における八ッ場ダムの治水効果はわずかなもの
最近50年間で最大の洪水は平成10年9月洪水で、八斗島地点のピーク流量は9,220㎥/秒であった。昭和56年から八ッ場ダム予定地に近い岩島地点で流量観測が行われているので、実際の観測値から八ッ場ダムの治水効果を知ることができる。
同洪水について八ッ場ダムの効果が最も大きくなる条件で求めた結果が図1である。
八斗島地点における八ッ場ダムの水位低減効果は最大13cmで(実際には8cm程度)、そのときの水位は堤防の天端から4m以上も下にあった。八ッ場ダムがあったとしても、この洪水においては何の意味もなかった。
また、図2は堤防の天端と同洪水の痕跡水位(最高水位の痕跡)を八斗島地点から栗橋地点(埼玉県)までの区間について示したものである。どの地点とも痕跡水位は堤防天端から約4m下にあるので、八ッ場ダムによるわずかな水位の低下が意味のないものであることは明らかである。
このように利根川はほとんどのところで大きな洪水を流下できる河道断面積がすでに確保されているから、八ッ場ダムのわずかな治水効果は意味を持たない。
八ッ場ダムの効果が最も大きくなる条件で求めた計算結果
みんなの八ッ場図版13

2 ダム建設のために後回しにされる河川改修
(1)破堤の危険性をはらむ利根川の堤防
堤防は何度も改修を重ねてきたため、十分な強度が確保されているとは限らない。洪水時に河川の水位が高い状態が維持されると、水の浸透で堤体がゆるんで堤防が崩れたり(すべり破壊)、あるいは堤防にみず道が形成されて堤防が崩壊したりする(パイピング破壊)危険性がある。
国土交通省が利根川の堤防の安全度を調査した結果を情報公開請求で入手して、整理した結果の一例を図3に示す。利根川中上流部の右岸は、すべり破壊・パイピング破壊の安全度が1を大きく下回って破堤の危険性がある堤防が随所にあることがわかる。利根川の他の区間も同じような状況である。
みんなの八ッ場図版14

(2)河川改修の事業費が急減
このように、利根川は破堤の危険性がある堤防が各所にあるから、堤防の強化対策を早急に実施しなければならない。ところが、利根川水系の河川予算の推移を見ると、図4のとおり、八ッ場ダム等のダム建設費が増加する一方で、堤防の強化を含む河川改修の事業費は年々急速に減少してきている。堤防の強化対策を後回しにして、治水効果が希薄な八ッ場ダム等のダム建設に河川予算の大半が注ぎこまれている。
このように、治水に関しては、八ッ場ダムは必要性が希薄なだけでなく、利根川の真の治水対策を遅らせる重大な要因になっている。
みんなの八ッ場図版15
 Ⅵ ダム予定地の生活再建と地域の再生について

1 地元の町とダム予定地からの反発
八ッ場ダムの中止に対して地元の町とダム予定地から次のように強い反発が出され
ている。「地元はダム事業に多大な犠牲を払って協力してきた。ダムの完成は地元との約束である。中止となれば、地元住民は途方に暮れ、観光再建計画でも再度ゼロからの再考を余儀なくされ、ダメージは計り知れない。」
ダム予定地では多くの人が代替地への移転、補償金など、ダムを前提として生活設計を立てており、ダムの中止はその生活設計を白紙に戻し、地元の人たちを苦境に追い込んでしまうから、この反発は当然のことである。3で述べるように八ッ場ダムの中止に当たっては、水没予定地の人たちの生活を再建し、地域を再生させるため、最大限の取り組みがされなければならない。

2 ダム事業を進めても地元の活性は取り戻せない
ただ、注意を要するのは、このままダム事業を進めても、人口の激減で活性が大きく失われてきているダム予定地が再び活性を取り戻すことはきわめて困難だということである。

(1) 八ッ場ダム湖は観光資源にならない。
国と県は、八ッ場ダム湖を観光資源としてダム予定地周辺を一大リゾート地にする地域振興構想を示しているが、その構想は絵空事にすぎない。八ッ場ダム湖は観光資源になるような代物ではない。夏期は洪水調節のため、満水位から28mも水位が下がり、渇水時にはさらに10mも下がるダム湖である(3ページのグラフ参照)。しかも、上流の観光地や牧場等から多量の栄養物が流入してくるダム湖であるから、浮遊性藻類の増殖による水質悪化が避けられない。貯水池の底の方に汚れた水がたまっているダム湖が観光資源になるはずがない。
八ッ場ダム完成後の景観イメージ
みんなの八ッ場図版16
群馬大学社会情報学部戸叶知美さんの卒業研究論文より(石川真一研究室)
① 夏期には水位が満水位から28メートル以上も低下
② 浮遊性藻類(植物プランクトン)の異常増殖で水質がひどく悪化

(2) 美しい吾妻渓谷の喪失
吾妻渓谷は八ッ場ダムができると、その上流部は破壊されるか、ダム湖の底に沈んでしまうが、残される中下流部の渓谷も今の美しさを失ってしまう。岩肌の美しさは時折来る洪水によってその表面が洗われることによって維持されているから、ダムが洪水を貯留するようになると、下久保ダム直下の三波石峡のように岩肌をコケが覆い、草木が茂って様相が大きく変わってしまう。

(3) ダム湖による地すべり発生の危険性
八ッ場ダム予定地の周辺は地質が脆弱なところが多いので、ダムができてダム湖から水が浸透し、湖水位が大きく上下すると、地すべりが起きることが予想される。川原湯の代替地の一つである上湯原地区は面積では最大の地すべり危険地区である。ダム完成後、地元住民は地すべり発生の危険性をいつも心配する日々を送る可能性が高い。
以上のことを考え合わせると、このままダム事業を進めても、ダム予定地が観光地として活気を取り戻し、人々が経済的にも精神的にも安定した生活を送ることはむずかしいように思われる。

3 ダム中止後こそ、真の地域再生を!
(1) ダム中止後の生活再建支援法案の制定を!
ダム中止後は国交省や県が示す絵空事ではなく、吾妻渓谷などの自然を観光資源として活かして着実に地域を再生する道筋を考えなければならない。
生活再建と地域振興、それらを推進するためには、そのことを制度的に可能にする法律の制定が必要である。
民主党は今年5月20日に「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案(仮称)骨子案」を発表し、パブリックコメントの募集を行った。その骨子案では、国、都道府県、市町村、住民で地域振興協議会を組織した上で、そこでの協議を経て、都道府県が地域振興計画を作成し、その計画に基づく事業が国の交付金で実施されることになっている。今後の法案化の段階で具体的な内容が加えられていくであろうが、何よりも大事なことは地元住民の意向に基づいて生活再建・地域振興の計画が策定されなければならないということである。そのためには、地元住民の合意形成が必須条件であることが法律に明記される必要がある。

(2) 生活再建、地域再生のためのきめ細かな取り組みを!
このような法律に基づき、老朽化した家屋・建物の新改築、生活再建のための物心両面の支援措置、衰退した地域の基幹産業を再生させる支援プログラムの推進、移転した人たちを呼び戻すための既買収地の譲渡など、地域を再生させるための様々な取り組みがされていかなければならない。それは、不要なダム計画の推進で地元を半世紀以上も苦しめてきた国と群馬県、さらに、ダム計画を後押ししてきた下流都県の責任の下に行われるべきものである。
みんなの八ッ場図版17
(↑ここまでの作成:嶋津暉之)

(↓ここからの作成:まさのあつこ ジャーナリスト)

「自民党政治」が進めた公共事業(八ツ場ダム)に関する現状

政権交代で国民が転換を望む構図

1.新規事業はおろか、2020年度以後は、既存施設の維持管理・更新ができない

国土交通省所管の社会資本(道路、港湾、空港、公共賃貸住宅、下水道、都市公園、治水、海岸)を対象に、2030年まで推計した維持管理・更新費。
みんなの八ッ場図版18
出典:平成17年度「国土交通白書」(2005年度以降、2030年までの投資可能総額を前年比で国3%削減、地方5%削減したケース)

2.八ツ場ダム関連自治体の人口減少はすでに始まっている

1952年に吉田茂内閣の元で着手、1964年に東京オリンピック渇水に備えて予備調査再開。2001年に工期延長、2004年に事業費倍増、2008年に工期延長。2015年完成予定、事業費4600億円も延期増大の可能性が高いが、2015年には不要。問題は上記1で見るようにその先。
みんなの八ッ場図版19
表:国立社会保障・人口問題研究所『日本の都道府県別将来推計人口』(平成19年5月推計)から作成

3.八ツ場ダムは自治体財政をさらに圧迫する

少子高齢化社会で、自治体はより少ない人口、少ない税収で、借金返済、社会保障費の増大に対応する。分権は叫ばれるが、分権されてもすでに自治体の財政に自由度・柔軟性はない。
みんなの八ッ場図版20
出典:平成17年度都道府県決算状況調と各都県からの聴取により作成。【財政力指数:必要な財源をどれぐらい自力で調達できるか 経常収支比率:人件費や公債償還費など使い道の決まっている経費の割合】(「未来世代にとって八ツ場ダムは必要か」まさのあつこ世界2008年4月号からの再掲)

4. 潤ってきたのはダム予定地ではなく、八ツ場ダム関連事業受注体と国交省天下りだった
みんなの八ッ場図版21
長妻昭衆議院議員/大河原雅子参議院議員入手データ等より作成
(「未来世代にとって八ツ場ダムは必要か」まさのあつこ世界2008年4月号からの再掲)

5.八ツ場ダム推進を審議会で決定したのも天下り委員

河川法に基づき八ツ場ダム事業を含む利根川水系河川整備基本方針を決定した「社会資本整備審議会・河川分科会・河川整備基本方針検討小委員会」(2005年12月19日)に出席した「天下り」委員および知事代理の地方官僚
みんなの八ッ場図版22

コメント

私たちが目にする報道は、「地域住民は困惑悲嘆」とか、「既に7割作った」とか「関係都県知事怒る、金返せ」など、見ているとダムは作った方が良いと言う気持ちにさせられるものばかりだと感じます。
しかしこのサイトへ来てみると、全く違う話で。
ここで言っても仕方ないことですが、マスコミはもう少し偏りなく報道してほしい。
こんな事実、あんな事実、きちんと両面伝えてほしい。

私は下流の川近域住民です。
いつもでもこんなことに金使っとらんで、さっさと堤防整備しろ!金をかけるなら必要なところにかけてくれ!!!

ダムイラネ。
田舎の限界集落対策とか堤防対策すりゃ終わり。

良く纏められた資料ですね

正直な所、政府関係者でなくても『コレだけの資料が作れる』にも関わらず、前原大臣はコレと同等以上の資料を用意したのか分かりませんが、結論ありきで『話し合い』と言って出かけた時点で終わってますね。大臣の資質を感じれないというか・・・。

とりあえず、この資料が私には正しいのか分かりません。でも、資料としての信頼性は新聞やテレビ報道より信用出来ると感じましたので、少し広めてみたいと思います。

埼玉は、平成に入ってから、6回くらい取水制限されてます。埼玉には必要なんじゃないかな

でもさ、ダムって夏は洪水に備えてダムの水減らしとかなきゃならないから、水はあまり貯めておけないそうだよ。

断水の記録

渇水被害ですが、「え?そんなにあったっけ?」です。検索すると、主な渇水被害ではH9が最後で、それまでに5回だけです。
www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/shingikai/shiryo_toneara_1/8kassuihigai.pdf
c3plamo.slyip.com/blog/archives/2009/09/post_1465.html
埼玉の有間ダムについての答弁。
www.pref.saitama.lg.jp/s-gikai/gaiyou/h1802/1802l082.html
台風などに備えて水位を下げすぎたために渇水が発生(H16,H17)とあります。
埼玉の会でも、水需要についての分析や滝沢ダムの現状が報告されてます。
yambasaitama.web.fc2.com/pdf/200903/20081130.pdf
これが水掛論にならないことを願います。(シャレも含めてます)

すいませんが減電保障とはどういう事でしょうか?
貯める間は水量が減るのは理解できますが、
貯まり切ればそれ以後は変わらなくなるのでは?
他の水系に送水するという事でしょうか?

><さん、
ご質問の減電保障ですが、吾妻川流域には東京電力の水力発電所が12箇所?運転しています。
 八ッ場ダムを作ると、ダムに貯留させるために、発電所への水が取られるので、発電量が減少され、営業補償をする必要が出てくると、言われています。それが減電保障です。(「みんなの八ッ場パーフェクトガイド」3ページ)
これで答えになっていますか?

><さまへ、減電保障について
利根川の流況によって八ッ場ダムからの利水の補給が頻繁に行われますし、また、ダムからは常時毎秒2.4m3の維持流量を放流しますので、東電の発電所への 送水量は平均すると、大幅に減少します。
従って、いくらダムの貯水が完了しても、常時水は放出され続け、東電への送水は減少し、減電補償を引き続き行わなければならないというわけです。
  • [2009/10/06 18:46]
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