八ッ場ダム住民訴訟 最終陳述書 

                                2009年6月23日
八ッ場ダム住民訴訟 最終陳述書

原告代表 武笠紀子
 
2004年9月、八ッ場ダム事業への負担金支出差し止めを求めて県民1337名が住民監査請求を行いましたが、その大要は棄却でした。千葉県が財政破綻に陥っているにもかかわらず、約760億円を無駄な八ッ場ダムに投ずることは許されることではなく、私たち県民に残された手段である司法の判断を求めて、同年11月、51名の原告で提訴、以来4年と7ヶ月を経て、本日最終弁論を迎えました。その間、法廷において八ッ場ダム建設事業は治水上も利水上も必要なく、また地質の脆弱さゆえ災害を誘発する危険や美しい吾妻渓谷等に環境破壊をもたらすものであることをつぶさに論証してきました。
最終陳述
最終陳述
提訴当初より千葉県は「この住民訴訟は住民訴訟に値しない。」として、裁判の無効を主張、終始、主権者である県民の権利さえ認めようとしませんでした。しかし、裁判所の主導により、治水、利水、財務会計行為等、あらゆる論点の主張を展開することができました。この裁判を通して、千葉県が私たち県民の真剣な取り組みに正面から論争を行わず、不誠実極まりない対応であったことを私たちは忘れることができません。
最終陳述
最終陳述
 昨年7月に行われた証人調べでは、原告側証人嶋津暉之さん、大野博美さんに対して、その場ではいっさいの反論もせず、後に従来の主張をかなぐり捨て、新たな「水需給計画」に基づいた反論意見書を出してきたことです。これは立証という裁判で最も重要な局面で「水需給計画」の開示を遅らせたことは不誠実であり、県民に対して許される行為ではありません。国の新しい水需給計画である第5次フルプランに千葉県の最新データを反映しなかったことは県の大きな失態であったことも、ここに改めて強調して明らかにいたします。
最終陳述
最終陳述
 この裁判は、私たち県民にとって単なる裁判の勝ち負けではなく、大切な税金が有効に使われるのか、無駄に使われるかの重大な分かれ目です。「八ッ場ダムが千葉県民の役に立たないとは言えない」などとあいまいな理由で支出を正当化できる金額ではなく、今後の千葉県民の福祉に重大な影響を与える支出です。千葉県が県民の利益を優先に考えるのなら、八ッ場ダムの必要性を自ら検証すべきでしたが、今まで事業費の増額、二度にわたる工期延長の際にもおざなりの検証に終始し、ただ国の説明を鵜呑みにするばかりでした。国の直轄事業に対する地方負担金のあり方が問題となり、地方分権が名実ともに求められているなか、千葉県の姿勢は時代の趨勢に逆行するものと言わざるを得ません。県は八ッ場ダムの必要性について説明責任を果たし、立証責任を負う立場にありながら、その責務を全うしませんでした。いま一度、行政の役割とは何か、基本に立ち返って考えていただきたいと思います。
 いま現地では、国道、鉄道、県道の付け替え、代替地の造成など関連事業がすさまじい環境破壊の中で進められています。国は2015年ダム本体の完成を予定していますが、工事は大幅に遅れ、国道の付け替え工事の完成区間は本年3月末で全体のたった6%だということです。これらの関連工事が完了し、住民の移転が終わらないとダム本体の工事は進めることはできず、さらなる工期延長や事業費増大の可能性が高まっています。また、国は昨年、ダム本体の基礎岩盤の掘削を18mからわずか3mに短縮、コンクリートの量も160万㎥から
91万㎥に減らすなど規模を大幅に縮小する設計変更を明らかにしました。これによりダム本体の工事費は建設事業費4600億円のうちのわずか9%に減少しています。このことは計画全体の是非を離れて、八ッ場ダム本体の安全性に大変不安な材料を残すことになります。
最終陳述
最終陳述
 いま国会では公共事業中止後の地域の再生、住民の生活再建を法的に保証するための法案づくりが進められています。今なら八ッ場ダムは止められます。必要性の乏しい事業が「一旦始まったら止められない」としてずっと続いても誰も責任を取ることもなく、負担は市民と次の世代が負うことになります。ともに八ッ場ダム住民訴訟を行った一都五県の原告と弁護団は専門家の協力を得ながら、情報公開で得たデータ、ダムサイト、地すべり地域、利根川の堤防の状況など全て手弁当で調べ、53人に及ぶ弁護団の皆さんはその事実を検証し、4年半努力を続けて下さいました。いつも傍聴に駆けつけて下さった市民の皆さんも共に裁判に参加して下さいました。しかし、5月11日の東京地裁の判決はこれらの事実を全く考察せず、行政の言い分を全て認め、司法への信頼をことごとく失わせるものであり、時代が逆戻りしたのかと怒りに震えました。
最終陳述
私たちのこの裁判の目的の一つは、日本社会の三権分立が機能しているか、主権在民という民主主義が息づいているかを確認することでもあります。千葉地裁のご判断に希望を托しながら、原告の最終陳述といたします。裁判所の皆さまにはこれまでの原告側陳述に際し、さまざまなお取り計らいをいただき、大変ありがとうございました。

                                                    以 上

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