STOP八ッ場通信12号P5【水没予定地の疲弊と官僚の高笑い】 

STOP八ッ場通信12号P5

水没予定地の疲弊と官僚の高笑い
―工事の騒音や振動が、まるで「出て行け、出て行け」と、毎日追い立てるように聞こえて、精神的に持ちこたえられなくなったんです。
水没予定地から転出した人が、故郷を出る決心をした時の心境をこう語っていた。

先ごろ、川原湯温泉の駅前で、湖面1号橋の二つの橋脚の工事が始まった。
対岸の川原畑では、湖面1号橋のP2橋脚を造るため、昨年から山を切り崩す基礎工事が始まっていたが、前原大臣のゴーサインでいよいよ川原湯側のP3,P4橋脚の工事が始まったのだ。
川原湯温泉街では、柏屋旅館に続いて高田屋旅館も秋いっぱいで休業に入るという。マスコミでは政権交代で休業相次ぐと報道されているが、こうした状況はダム事業が進んできたためで、政権交代のせいではない。
問題は、ダム中止を掲げた政権下で、こうした地元の状況に何の変化も見られないことだ。

ダム予定地では、いたる所で道路や砂防工事が行われている。政権交代によって、ダム計画を前提に生活設計を立ててきた地元民の間に動揺が走り、政治や行政への不信が増幅したのは当然のことだ。
社会に大きな影響を及ぼす政策転換には、弱者のセーフティネット作りが鍵となる。
国が本当に八ッ場ダムを中止しようとするならば、法整備への取り組みが欠かせない筈だが、残念ながらそうした動きは見られない。

 そうしている間に、国交省の有識者会議が全国のダムの検証基準案を発表した。
八ッ場ダムはダムを推進してきた関東地方整備局みずからが残コストを最重視した検証作業を行うという。
そういえば昨年の総選挙の最中、群馬県庁を訪れた関東地方整備局の幹部が「ダムを中止した方が高くつく」とアナウンスしていた。
河川官僚によるお手盛りの検証作業では、ダム必要論の欺瞞も災害誘発の危険性も素通りされるだろう。河川官僚の高笑いが聞こえるような、こんな河川政策を野放しにしてよいわけがない。 
(八ッ場あしたの会 渡辺洋子)

<コラム>

参議院国土交通委員会(3月16日)でのやりとりから

本体工事が凍結されているにもかかわらず、その付帯工事や補償工事が進んでいる事態は、“法治国家における法に基づかない行政権限の行使”として強く批判して、その正当性の根拠を質した自民党議員(元国交省河川局長)に対して、前原大臣は“現段階ではダムの本体工事の中止という方針を示しているだけで、特定多目的ダム法に基づいた法律上の中止の手続きに入ってはいない”との認識を示し、“特定多目的ダム法に基づく事業の具体的な進め方に関しての判断権限は国交大臣にあり、特ダム法に基本計画の変更や廃止の規定が存在することを踏まえれば、八ツ場ダムにおいても中止の方針を示した上で本体工事の中止をすることが直ちに法令に違反しているとの指摘は当たらない”と反論していました。
基本計画の廃止に関する法律上の手続きにあたっては関係自治体の同意が必要という要件の乗り越えが焦点となるでしょう。 
(坂倉敏雅)


STOP八ッ場通信12号P4【やっぱり八ッ場ダム建設は中止させねば!】 

STOP八ッ場通信12号P4

<会員から>
やっぱり八ッ場ダム建設は中止させねば!
 サブプライム破綻、ギリシャ金融危機。どれも数百年に一度の変革を迎えている。国内では普天間移転や巨額財政赤字などこれでもか、これでもかと試されている。そうした中の一つに八ッ場ダム建設阻止の問題もある。

 民主党が勝って、前原国交大臣が八ッ場ダム建設中止を宣言した時、これですべて解決なのだと誰しもホットしたのではないか。が、実はそうではなかった。

 人生50年というが、生まれた時から祖先伝来の大切な川、山、温泉宿が、水没すると言われ、嫌だとしがみついた。その指一本一本を、引っぱがすようなことを国交省はやってきた。水需要予測や水害危機の数値までごまかしてダムが必要だと主張し、地盤崩落の危険がある山間にダムを作ろうとしてきた。

 そんな八ッ場ダム建設中止は当然として私達都市住民は考えてきた。しかし一方で、指一本一本を引っぱがされて、移住を迫られた人達には、それはまた新しい夢がなければならなかっただろう。新しい夢を疑いつつも反対ができなくなり、賛成を強要された人達には、もう一度、指を掛けてしっかり掴めと言われてもその痛みに堪えることができないのは当然だ。

 あらゆる手段を使ってごまかし、金と権力で脅しすかした国交省と、その背後の自民党金権代議士やゼネコン。にたにた笑って彼らはそれなりの努力と能力で時代の風を受け、支持者を集め地位を獲得しダム建設を推し進めた。そういう政治に今、多くの市民はノーと言っている。

 変えて行くのには大変な力がいる。悲壮な力もいる。正義派の弁護士の方々や嶋津暉之さん、加藤登紀子さんら大勢の市民が阻止に心血を注ぎ、その努力はまだ続いている。しかし正義にこだわるのが業なら、不正義にこだわるのも彼らの業。闘っていくしかない。かつて、ダム反対の立場だったが、今は賛成に廻られた地元の方々には頭を下げ、それでももう一度苦しみをお願いするほかはない。未来に住みよい日本を残すためだ。私たちもまた努力し、同じ苦しみで山河環境を愛して行ける状況をつくらなければならない。
(佐倉市 佐々木裕)

STOP八ッ場通信12号P3【ちば 弁護団かたる 第5回 及川智志さん】 

STOP八ッ場通信12号P3

ちば 弁護団かたる 第5回 及川智志さん

1 こんな経緯で弁護士になりました
 1965年に宮城県石巻市で生まれました。石巻は北上川の河口に開けた港町です。両親が魚の加工工場を経営していましたが、北洋漁獲規制の強化により水揚げが減って倒産してしまいました。私が小学校5年生のときでした。突然東京に行くと言われ、それっきり故郷を離れることになりました。

 その後、静岡県清水市(清水港や次郎長で有名な町ですが、合併でいまは静岡市清水区になってしまいました)で中学、高校時代を過ごし、早稲田大学に入学しました。田舎町で真面目に育った若者に東京は刺激的でした。遊びに目覚め、そのためのアルバイトも忙しくて大学の授業はほとんど受けませんでした。早稲田は、司法試験の合格者が多い大学ですが、法学部の学生は、試験勉強に勤しむ学生と、まったく勉強しないアホウガクブ生に二分されています。私は間違いなく後者に属していました。

 そういうわけで、大学卒業時には弁護士など夢想だにせず、デパートに就職しました。当時はバブルのころで、ボーナスが年3回もある会社でしたし、華やかな職場が良いなあという程度の理由でした。しかし、上司とケンカしてばかりで、2年ほどで業界新聞の記者に転職しました。この転職動機もなんとなくという感じでしたが、強いて言えば自由な職業にあこがれていました。記者は4年やりましたが、実はあまり自由に書けないジャーナリズムの実態というものを知り、嫌になりました。そういえば法学部出身だったよなあと思い、確か29歳のときに会社を辞め、バイトをしながら司法試験を受けました。こんないい加減な経緯で平成11年に私は弁護士になりました。

 8年間イソ弁として過ごし、平成19年に「市民の法律事務所」を名乗って独立しました。市民事件ばかりを受けていますので、企業法務はやりませんし、顧問も1件もありません。いま思うと、都合7年間の会社勤めは弁護士稼業に役立っている気がします。弁護士の仕事は気に入っています。自由にできるし、理想を語って生きていけるからです。

2 司法修習生給料の廃止
 ところで、今年11月に司法修習生の給料が廃止されます。司法試験合格後法曹資格を得るまでに、他業(バイトも)禁止で強制される修習生の期間、給料を払わないこととし、そのかわり300万円程度を国から貸し付けるという制度になるのです。

 そうすると、私のような社会人からの転校組は法律家を志望しなくなるでしょう。多様な人材を法曹に取り込むという司法改革の理念に背理しますし、数百万円もかかるロースクール制度と相まって、金持ちの子以外は法律家になれなくなってしまいます。

 日弁連では、この制度改悪を阻止するために運動していますので、どうか市民集会や署名活動へのご協力をお願いいたします。

3 八ッ場ダム訴訟について
 この原稿を書いている数日前に埼玉地裁での敗訴の報が届きました。判決は連敗続きですが、八ッ場ダム訴訟は日本社会を少しずつでも変えてきていると思います。理念を高く掲げ、勝つまで諦めず、闘い抜きましょう。

STOP八ッ場通信12号P2【隠された八ッ場ダムの素顔~談合疑惑を斬る】 

STOP八ッ場通信12号P2
 
隠された八ッ場ダムの素顔            
談合疑惑を斬る

何故、ムダと判っている八ッ場ダムを作ろうという人たちがいるのでしょう。
何故、政治家があれほど声高に八ッ場ダム推進を叫ぶのでしょう。
半世紀をこえるダムへの執着の源はどこにあったのでしょう。
私たちは告発します。いま明らかにします。

 八ッ場ダム建設事業には、ダム建設関連に4600億円、周辺事業に1246億円が計上され、さらに群馬県による道路整備などの事業費が上乗せされ、総額は6000億円以上とされていますが、建設事業は、水没地や工事用地、道路用地の用地取得および建設工事に大別され、用地取得費は約3000億円。また建設工事費にも約3000億円が使われる計画です。

 八ッ場ダムの建設地である群馬県は、上州戦争と呼ばれる福田・中曽根・小渕の総理経験者による権力闘争が県知事・県議など地元政治家と一体になり、建設業者が政治家の支持者となって選挙を支え、また政治活動に政治資金を拠出して、その見返りに公共工事の配分を期待してきました。
 公共工事は、官が指名する指名競争入札を多用して、談合を利用する手法が1970年ころから永年にわたって行われてきました。 温泉観光地のほかは基幹産業を持たないところから土建業界が地域経済にしっかりと根をおろしてきたものの、談合のぬるま湯に安住した業界は、自由競争にもまれずに弱体化し、公共工事の減少する中にあっても他の地域に進出したり、多角的な業種に進出することもできずにきました。  ここで出た八ッ場ダム中止は、地域経済そのものの沈滞につながるとして中止絶対反対を唱え、地域振興策の名の基に政治家や官にしがみつこうとしているのが今日の状況なのです。

 八ッ場ダム建設事業における談合は、このような背景の中で行われてきましたが、この実態を私たちは明らかにし、調査の結果を5月28日、公正取引委員会に独占禁止法に基づく措置請求書として提出し、立ち入り検査による追求など厳正な処分を求めました。
        措置請求書の概要
  1. 驚きの平均落札率 95%
    99%以上が17件も、神業か悪魔の仕業か。
  2. 一位不動の落札
    談合があると、一位の業者は何度でも一位になるようにしています。それが6件も確認できました。    
  3. 偏重した業者指名と一部業者に集中した落札
    群馬県には業者は3000社以上ありますが、その中の51社だけを指名し、しかも10社で独占して受注しました。なかでも政治家と密着したB工業㈱は18回も受注しています。
  4. 1社入札と入札辞退により、33%が無競争。
    10社程度が参加して競争することが基本ですが、入札辞退が相次ぎ、1社入札で実施したケースが16件。33%が無競争で発注した異常さです。
(村越啓雄)

STOP八ッ場通信12号P1【八ツ場ダムをめぐるいま~ダム建設はとまるか~】  

STOP八ッ場通信12号P1

八ツ場ダムをめぐるいま~ダム建設はとまるか~
                                
“八ツ場あしたの会”は、ダム中止に向けて、次のような手続きを示しています。
●特定多目的ダム法による中止の決定(建設事業の基本計画の廃止の手続き)
●ダム事業中止後の生活再建・地域再生法の制定
生活補償、家屋建替え補償、休業補償、基幹産業再生支援など
●八ツ場ダム関連事業の精査

 政権交代直後の記者会見で前原国土交通大臣がダム建設の中止を宣言(2009年9月)、同時にダム本体工事の入札を凍結しました。ダムの建設費を負担する1都5県の首長は結束して反発、本体工事を除く関連工事については

{付替国道(完成・暫定供用・概成約60%)及び付替県道3路線(同じく約60%)、JR吾妻線の付替工事(約80%)、水没地域の住民の移転先代替地造成工事(移転済世帯約30%)と、その造成地を結ぶ橋梁工事などは}

継続して進行しています。
一方公金支出の差止めを求めて1都5県の各地裁に提訴した住民訴訟は、“事業自体の瑕疵が重大かつ明白であって、利根川水系工事実施計画等が無効であるといった特段の事情ある場合に限って、知事は受益者負担金を支出してはならない” (2010年1月千葉地裁)と、首長の裁量範囲を最大限に容認した判断で、訴えは棄却されました。

もともと政治の場に司法の判断の影響を期待したのですがこれが空振りに終わり、ダム本体工事着手直前の政権交代によって政治主導で事態は動いたのですが、方針変更にあたっての法的な手続き面での不備が事態の混迷に拍車をかけました。

将来の治水行政の転換を示唆するものなることが期待されてスタートした国交大臣の私的な諮問機関である「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」が中間報告をまとめました。(詳しくは、“八ッ場あしたの会”ホームページ参照)
その中間報告からうかがう限り、現状追認のおそれが高まっています。八ツ場ダム本体の帰趨についてはもはや楽観は許されない状況です。

7月11日実施の参議院議員選挙の結果は、より強固な政権基盤を構築しダム本体建設をストップさせる法的な手続きに入る狙いと期待を裏切るものとなりました。政治的過程については暫時その移り行きを見守ることになるのでしょうか?
一方東京高裁に舞台を移した控訴審について進行協議が行われています。司法の場ではあくまでも地裁判決の不当性を論証するべく原告と弁護団の努力が続いています。 
(坂倉敏雅)

八ッ場裁判千葉地裁の判決文 

平成22年1月19日判決言渡・同日原本領収裁判所書記官赤坂剛
平成16年(行ウ)第68号公金支出差止等請求事件
口頭弁論終結日平成21年6月23日
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり
主文
1. 本件訴えのうち,以下の部分を却下する。
  1.  被告千葉県水道局長及び同千葉県企業庁に対し,八ッ場ダムに関し,特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金,水源地域対策特別措置法12条1項1号に基づく水源地域整備事業の経費負担金,財団法人利根川・荒川水源地域対策基金の事業経費負担金の支出の差止めを求める部分のうち,平成21年6月23日までにされた支出に係る部分
  2. 被告千葉県水道局長及び同千集県企業庁長が国土交通大臣に対し八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を怠る事実の違法確認を同被告らに求める部分
  3.  被告千葉県知事に対し,八ッ場ダムに閲し,河川法63条に基づく受益者負担金の支出の差止めを求める部分のうち,平成21年6月23日までにされた支出に係る部分
  4. (被告千葉県知事に対し,八ッ場ダムに閲し,千葉県水道局長及び千葉県企業庁長が特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金を支出するについて,これを補助するために行う一般会計から水道事業及び工業用水道事業特別会計に対する繰出の差止めを求める部分
2. 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

3. 訴訟費用は,原告らの負担とする。

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