八ッ場裁判千葉地裁の判決文
平成22年1月19日判決言渡・同日原本領収裁判所書記官赤坂剛
平成16年(行ウ)第68号公金支出差止等請求事件
口頭弁論終結日平成21年6月23日
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり
主文
1. 本件訴えのうち,以下の部分を却下する。
3. 訴訟費用は,原告らの負担とする。
→八ッ場裁判千葉地裁の判決文の全文はこちら
平成16年(行ウ)第68号公金支出差止等請求事件
口頭弁論終結日平成21年6月23日
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり
主文
1. 本件訴えのうち,以下の部分を却下する。
- 被告千葉県水道局長及び同千葉県企業庁に対し,八ッ場ダムに関し,特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金,水源地域対策特別措置法12条1項1号に基づく水源地域整備事業の経費負担金,財団法人利根川・荒川水源地域対策基金の事業経費負担金の支出の差止めを求める部分のうち,平成21年6月23日までにされた支出に係る部分
- 被告千葉県水道局長及び同千集県企業庁長が国土交通大臣に対し八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を怠る事実の違法確認を同被告らに求める部分
- 被告千葉県知事に対し,八ッ場ダムに閲し,河川法63条に基づく受益者負担金の支出の差止めを求める部分のうち,平成21年6月23日までにされた支出に係る部分
- (被告千葉県知事に対し,八ッ場ダムに閲し,千葉県水道局長及び千葉県企業庁長が特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金を支出するについて,これを補助するために行う一般会計から水道事業及び工業用水道事業特別会計に対する繰出の差止めを求める部分
3. 訴訟費用は,原告らの負担とする。
→八ッ場裁判千葉地裁の判決文の全文はこちら
- [2010/07/17 11:09]
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千葉県の水需要(陳述書から)
2008年6月12日陳述書より抜粋 →PDF版ははこちら
千葉県の水需要
私が県議会議員になった時点で、すでに千葉県の水需要は減少傾向に入っていました。
ア.水道用水
水道用水の一日最大給水量の実績は、平成13年度の218万m3/日をピークに、以後は顕著な減少を続けています。最新のデータである平成18年度では208万? /日であり、「千葉県の長期水需給」による平成17年度予測値244万m3/日を36万m3/日も下回っています。
又、千葉県の現在の保有水源は256万? /日(被告による給水量ベースの値、中川・江戸川緊急暫定と坂川農業用水合理化を含む)であり、平成 18 年度実績を48万m3/日も上回っています。これは八ッ場ダム開発水の1.88m3/秒 (16.2万m3/日)(取水量ベース)の3倍にも相当する水量です。
千葉県の水政課にこの点を質すと、常に返ってくる答えは「各水道事業体から、これだけ水が必要だと上がってくる数字を積み上げた結果が、県の示す水需要の数値である」ということです。
被告は準備書面17で、原告の主張「被告らが八ッ場ダム等の新規水源開発が必要だと主張する根拠となっている水需要予測は、このように実績を全く無視した架空のものである」(16P)に対し、「上記平成 17 年度の水道用水の推計は、各水道事業体が行った将来の水需要の予測を千葉県が集計等を行った上、単なる参考値として「千葉県の長期水需要」の資料編に示したものに過ぎない」(17P)と、非科学的な言い訳をし、「「千葉県の長期水需給」の基礎となっている各事業体の水需要予測は、基本的に平成 10 年度までの過去の実績データをもとにしているため、過去の実績をもとに分析する水需要予測においてはその当時の増加傾向を反映しているとは言えても、実績無視の予測を行っているなどという原告らの主張は、全く失当なものである」という反論をしています。しかし、平成 15 年の時点で、5年以上も前の古い実績を元に予測を行えば、現実と大きく乖離することは目に見えています。
各事業体の数字の積み上げをもとにした予測も、古いデータをもとにした予測も、どちらも過大見積もりへとミスリードすることが確実な手法です。現実の数字を見ようともせず、意図的に過大な数値へと導いていく県の姿勢は、「何がなんでも八ッ場ダムありき」であり、「最小のコストで最大の効果を」という地方自治体の鉄則を放棄したものと断じざるをえません。
イ. 中川・江戸川緊急暫定水利権
現在、5 月 1 日から 9 月 30 日までの農繁期間、中川に戻ってくる農業用水を余剰水として江戸川に導水し、毎秒 1.46? の暫定水利権としています。
被告準備書面では「江戸川・中川緊急暫定約 12 万? /日は、現在は暫定豊水水利権により利用できるものの、第 4 次フルプランにおいて、「昭和 61∼平成 12 年需要想定に係る水資源開発施設による水供給の見通しを勘案しながら、その解消を図るものとする」と位置づけられているように、不安定な水源である」と述べられています。
しかし、平成 9 年から 19 年までの農繁期の実績を見ると、千葉県と東京都合わせてほぼ毎年最大日量 50 数万? の取水があり、千葉県にとっては今日までの長期間、大きな保有水源となってきました。八ッ場ダムができると消滅するとされていましたが、千葉県は永続的利用を求めて、平成 16 年に以下の 2 点を国交省に要望しました。
① 当該緊急暫定について、フルプランの説明資料の表中に、合計の外数値でもいいので、水源名と水量をカッコ書きで位置づけたい
② 注釈については、「水資源開発基本計画に基づく水資源開発施設による水供給の見通しを勘案しながら、利水安全度の向上のために活用を図るものとする」と記載したい。
さらに、平成 19 年 3 月に千葉県が国交省水資源部に提出した「利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画需給想定調査について(回答)」で次のように要請しています。
「江戸川・中川緊急暫定水利については、水資源開発施設完成後においても渇水時に優先的に利用すること」この結果、第 5 次フルプラン案では、以下のとおり、中川・江戸川の暫定水利権は渇水時には使用できる旨が記載されるようになりました。
「江戸川・中川緊急暫定(現在、東京都水道用水 5.33 ? /s、千葉県水道用水 1.46? /s を取水)については、渇水等緊急時において、東京都及び千葉県が活用することにより、上流ダム群の貯水量の節約を図り、利根川全体の利水安全度の向上を図るものとする。」
渇水等緊急時に使えるということは、実質存在する水源であるということであり、第 5 次フルプラン案では、安定水利権として位置づけされたと言えるでしょう。
しかし、国交省が中川・江戸川の取水口の蛇口を開けたり閉めたりしているわけではありませんから、実際は 1 年間を通して安定的に流れている水を、自らの都合で「暫定」だの、「解消」だのと勝手な解釈をしているに過ぎません。
「渇水時には使用できる」などと、一片の文書で水が消えたり、生じたりする「机上での数字合わせ」という「愚」は、いい加減やめるべきです。
ウ.暫定水利権
毎日当たり前に飲んでいる水が、「暫定水利権」という名前がついているおかげで、ある日突然フッと消えてしまう。県民にとってこんな理不尽なことはありません。この元凶は、現在の河川法にあります。
現在の河川行政では、河川流量に余裕があって実際に取水が可能であっても、ダム等の水源開発事業に参加しなければ、正規の水利権が許可されることは一切ありません。国交省はダムなどの水源開発が完了するまでのつなぎとして、暫定水利権を各都道府県に与え、水源開発から離脱できないようにしています。
いわば、国交省は水利権の許可権限を、ダム建設を推進するための手段として使っているのです。私たちの命にとって不可欠な水を、国が公共事業と称して「私物化」していると言っても過言ではありません。
千葉県は唯々諾々と理不尽な国交省の姿勢に従うのではなく、県民の命を守るためにも、暫定水利権を安定水利権として要求していくべきです。
エ.工業用水
千葉県の工業用水は、近年の景気低迷を反映し需要は横ばい状態で、また工場の水リサイクルシステムの普及から、日量 30 万? 近くも余っています。
千葉県企業庁は平成 20 年 3 月に、工業用水道事業のあるべき姿として、今後 10年間を見据えて「第 2 次千葉県工業用水道事業長期ビジョン」を策定し、あわせて、前半 5 年間の実施計画である「中期経営計画」を発表しました。「長期ビジョン」の巻頭では、「産業構造の変化や水使用の合理化により水需要が伸び悩み、水源開発や老朽化施設の改築に要する費用負担の増加により厳しい経営環境となっていたことから、「安定給水」と「経営健全化」を最重点に、今後の事業の基本指針を明らかにした」と述べられています。過大な水需給予測を続けてきた企業庁が、ようやく自らの認識の過ちを認め、現実に即した計画へと方針を大転換させたといえるでしょう。
①千葉地区
八ッ場ダムの暫定水利権0.47? /秒をもつ「千葉地区」の平成 19 年度給水実績は87,909? /日(1 日平均給水量)であり、契約水量、および給水能力である121,200? /日の72.5%しか使われておりません。
経営状況は、料金収入は安定しているものの、八ッ場ダムなどの水源施設建設事業への参画負担金を起債により手当てしていることから、企業債残高が増加する一方で経営を圧迫しています。平成 19 年度の企業債残高は 86 億 4100 万円、平成24 年度には 135億 9300 万円に達する見込みです。また、累積資金残も平成 20 年度には 52 億 8,000 万円ありますが、3 年後には底をつき、平成 24 年度にはマイナス 31 億 8,000万円になる見込みで、経営が回らなくなる恐れがあります。
こうした中、「中期経営計画」では、千葉地区は、配水管がつながっている五井市原地区、五井姉崎地区、房総臨海地区の四者で「千葉関連四地区」を形成し、相互に水を融通しあって経費節減と安定した水運用を図るとしています。
② 千葉関連四地区
「中期経営計画」の15P には、四地区の平成 20 年度から 24 年度までの 5 年間の「予定給水量」が明記されています。驚いたことに、八ッ場ダムの暫定水利権をもつ千葉地区の平成 20 年度の予定給水量は、62,800? /日で、平成 19年度実績の87,909? /日を25,109? /日も下回っています。更に平成21 年度からは毎年32,000? /日と激減させています。
これは、千葉地区は印旛沼から取水しているところを、平成 21 年度から一部、
配水管のつながっている房総臨海地区の房総導水路経由へと変更する影響です。つまり企業庁は、上記四地区で配水管網を形成して効率的水運用を始めるため、今までのように各地区別の給水量ではなく、4 地区トータルの給水量として考えていくということです。
ところが、その 4 地区トータルの予定給水量は、平成 20 年から平成 24 年まで、毎年538,000? /日となっており、平成 19 年度の 4 地区それぞれの給水実績の合計572,203? /日を下回っているのです。
さらに、平成 19 年度の 4 地区それぞれの給水能力の合計815,760? /日を、実に277,760? /日も下回る始末です。八ッ場ダムの水利権は40,608? /日ですから、その 7 倍近くもの水が余っている計算で、もはや八ッ場ダムの必要性は完全に崩れ去りました。
企業庁はことあるごとに、「景気が上向くかもしれない」「異常気象による渇水が起こるかもしれない」と強弁しますが、今後保有水源の66%(538,000÷815,760)
しか使わず34%も余っているのに、渇水を心配してさらなる水源を、保有水源の5%にも満たない八ッ場ダムに求めるというのは常軌を逸しています。また、新しい企業の参入で水源が足りなくなるなどという憶測は、希望的観測を通り越して「妄想」でしかありません。
4.平成 16 年度「水道水源開発等施設整備事業の再評価」
被告準備書面17の38P で言及されている、千葉県水道局が平成 16 年度に行った八ッ場ダム事業の再評価とは、厚生労働省から国庫補助を受けている水道施設整備事業を 5 年ごとに見直す作業です。被告は準備書面で、水道局はこのように様々な見直しを行っているのだと胸を張っていますが、実態は威張れるようなものでは全くありません。
まず、学識経験者の第三者から意見聴取をしたとありますが、実際は通常設置されている「千葉県水道局事業懇談会」のメンバー5 人がそのまま横滑りをしているだけです。5年に 1度という大きな意味を持つ再評価ですから、規模を拡大したり、せめてダムに精通している人を新たに加えるなど、やるべきことを県は全くやっておりません。
実際、この再評価は通常の「千葉県水道局事業懇談会」の第 10 回目として行われ、時間もわずか 1 時間です。議事録を読んでみると、驚いたことにたったの 3ページで、ほとんど議論らしい議論もなく、職員の説明を聞くだけで終っています。
これで再評価したとは到底言えません。
更に、委員に前もって配られた資料には、人口と水需要の動向が今後も増加するとしか書かれておらず、委員が適切な判断を下すことは不可能です。例えば、添付資料の平成 7 年から 27 年までの水需要の動向表には、一人 1 日平均使用水量が平成 15 年までは 240 リットル台を推移しているのに、平成 17 年の予測値がいきなり 254.3 リットルに跳ねあがり、平成 22 年は 260 リットル台に突入しています。
このような一方的な資料で委員を誘導するとは、再評価の名前にも値しないのではないでしょうか。
大野博美
千葉県の水需要
私が県議会議員になった時点で、すでに千葉県の水需要は減少傾向に入っていました。
ア.水道用水
水道用水の一日最大給水量の実績は、平成13年度の218万m3/日をピークに、以後は顕著な減少を続けています。最新のデータである平成18年度では208万? /日であり、「千葉県の長期水需給」による平成17年度予測値244万m3/日を36万m3/日も下回っています。
又、千葉県の現在の保有水源は256万? /日(被告による給水量ベースの値、中川・江戸川緊急暫定と坂川農業用水合理化を含む)であり、平成 18 年度実績を48万m3/日も上回っています。これは八ッ場ダム開発水の1.88m3/秒 (16.2万m3/日)(取水量ベース)の3倍にも相当する水量です。
千葉県の水政課にこの点を質すと、常に返ってくる答えは「各水道事業体から、これだけ水が必要だと上がってくる数字を積み上げた結果が、県の示す水需要の数値である」ということです。
被告は準備書面17で、原告の主張「被告らが八ッ場ダム等の新規水源開発が必要だと主張する根拠となっている水需要予測は、このように実績を全く無視した架空のものである」(16P)に対し、「上記平成 17 年度の水道用水の推計は、各水道事業体が行った将来の水需要の予測を千葉県が集計等を行った上、単なる参考値として「千葉県の長期水需要」の資料編に示したものに過ぎない」(17P)と、非科学的な言い訳をし、「「千葉県の長期水需給」の基礎となっている各事業体の水需要予測は、基本的に平成 10 年度までの過去の実績データをもとにしているため、過去の実績をもとに分析する水需要予測においてはその当時の増加傾向を反映しているとは言えても、実績無視の予測を行っているなどという原告らの主張は、全く失当なものである」という反論をしています。しかし、平成 15 年の時点で、5年以上も前の古い実績を元に予測を行えば、現実と大きく乖離することは目に見えています。
各事業体の数字の積み上げをもとにした予測も、古いデータをもとにした予測も、どちらも過大見積もりへとミスリードすることが確実な手法です。現実の数字を見ようともせず、意図的に過大な数値へと導いていく県の姿勢は、「何がなんでも八ッ場ダムありき」であり、「最小のコストで最大の効果を」という地方自治体の鉄則を放棄したものと断じざるをえません。
イ. 中川・江戸川緊急暫定水利権
現在、5 月 1 日から 9 月 30 日までの農繁期間、中川に戻ってくる農業用水を余剰水として江戸川に導水し、毎秒 1.46? の暫定水利権としています。
被告準備書面では「江戸川・中川緊急暫定約 12 万? /日は、現在は暫定豊水水利権により利用できるものの、第 4 次フルプランにおいて、「昭和 61∼平成 12 年需要想定に係る水資源開発施設による水供給の見通しを勘案しながら、その解消を図るものとする」と位置づけられているように、不安定な水源である」と述べられています。
しかし、平成 9 年から 19 年までの農繁期の実績を見ると、千葉県と東京都合わせてほぼ毎年最大日量 50 数万? の取水があり、千葉県にとっては今日までの長期間、大きな保有水源となってきました。八ッ場ダムができると消滅するとされていましたが、千葉県は永続的利用を求めて、平成 16 年に以下の 2 点を国交省に要望しました。
① 当該緊急暫定について、フルプランの説明資料の表中に、合計の外数値でもいいので、水源名と水量をカッコ書きで位置づけたい
② 注釈については、「水資源開発基本計画に基づく水資源開発施設による水供給の見通しを勘案しながら、利水安全度の向上のために活用を図るものとする」と記載したい。
さらに、平成 19 年 3 月に千葉県が国交省水資源部に提出した「利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画需給想定調査について(回答)」で次のように要請しています。
「江戸川・中川緊急暫定水利については、水資源開発施設完成後においても渇水時に優先的に利用すること」この結果、第 5 次フルプラン案では、以下のとおり、中川・江戸川の暫定水利権は渇水時には使用できる旨が記載されるようになりました。
「江戸川・中川緊急暫定(現在、東京都水道用水 5.33 ? /s、千葉県水道用水 1.46? /s を取水)については、渇水等緊急時において、東京都及び千葉県が活用することにより、上流ダム群の貯水量の節約を図り、利根川全体の利水安全度の向上を図るものとする。」
渇水等緊急時に使えるということは、実質存在する水源であるということであり、第 5 次フルプラン案では、安定水利権として位置づけされたと言えるでしょう。
しかし、国交省が中川・江戸川の取水口の蛇口を開けたり閉めたりしているわけではありませんから、実際は 1 年間を通して安定的に流れている水を、自らの都合で「暫定」だの、「解消」だのと勝手な解釈をしているに過ぎません。
「渇水時には使用できる」などと、一片の文書で水が消えたり、生じたりする「机上での数字合わせ」という「愚」は、いい加減やめるべきです。
ウ.暫定水利権
毎日当たり前に飲んでいる水が、「暫定水利権」という名前がついているおかげで、ある日突然フッと消えてしまう。県民にとってこんな理不尽なことはありません。この元凶は、現在の河川法にあります。
現在の河川行政では、河川流量に余裕があって実際に取水が可能であっても、ダム等の水源開発事業に参加しなければ、正規の水利権が許可されることは一切ありません。国交省はダムなどの水源開発が完了するまでのつなぎとして、暫定水利権を各都道府県に与え、水源開発から離脱できないようにしています。
いわば、国交省は水利権の許可権限を、ダム建設を推進するための手段として使っているのです。私たちの命にとって不可欠な水を、国が公共事業と称して「私物化」していると言っても過言ではありません。
千葉県は唯々諾々と理不尽な国交省の姿勢に従うのではなく、県民の命を守るためにも、暫定水利権を安定水利権として要求していくべきです。
エ.工業用水
千葉県の工業用水は、近年の景気低迷を反映し需要は横ばい状態で、また工場の水リサイクルシステムの普及から、日量 30 万? 近くも余っています。
千葉県企業庁は平成 20 年 3 月に、工業用水道事業のあるべき姿として、今後 10年間を見据えて「第 2 次千葉県工業用水道事業長期ビジョン」を策定し、あわせて、前半 5 年間の実施計画である「中期経営計画」を発表しました。「長期ビジョン」の巻頭では、「産業構造の変化や水使用の合理化により水需要が伸び悩み、水源開発や老朽化施設の改築に要する費用負担の増加により厳しい経営環境となっていたことから、「安定給水」と「経営健全化」を最重点に、今後の事業の基本指針を明らかにした」と述べられています。過大な水需給予測を続けてきた企業庁が、ようやく自らの認識の過ちを認め、現実に即した計画へと方針を大転換させたといえるでしょう。
①千葉地区
八ッ場ダムの暫定水利権0.47? /秒をもつ「千葉地区」の平成 19 年度給水実績は87,909? /日(1 日平均給水量)であり、契約水量、および給水能力である121,200? /日の72.5%しか使われておりません。
経営状況は、料金収入は安定しているものの、八ッ場ダムなどの水源施設建設事業への参画負担金を起債により手当てしていることから、企業債残高が増加する一方で経営を圧迫しています。平成 19 年度の企業債残高は 86 億 4100 万円、平成24 年度には 135億 9300 万円に達する見込みです。また、累積資金残も平成 20 年度には 52 億 8,000 万円ありますが、3 年後には底をつき、平成 24 年度にはマイナス 31 億 8,000万円になる見込みで、経営が回らなくなる恐れがあります。
こうした中、「中期経営計画」では、千葉地区は、配水管がつながっている五井市原地区、五井姉崎地区、房総臨海地区の四者で「千葉関連四地区」を形成し、相互に水を融通しあって経費節減と安定した水運用を図るとしています。
② 千葉関連四地区
「中期経営計画」の15P には、四地区の平成 20 年度から 24 年度までの 5 年間の「予定給水量」が明記されています。驚いたことに、八ッ場ダムの暫定水利権をもつ千葉地区の平成 20 年度の予定給水量は、62,800? /日で、平成 19年度実績の87,909? /日を25,109? /日も下回っています。更に平成21 年度からは毎年32,000? /日と激減させています。
これは、千葉地区は印旛沼から取水しているところを、平成 21 年度から一部、
配水管のつながっている房総臨海地区の房総導水路経由へと変更する影響です。つまり企業庁は、上記四地区で配水管網を形成して効率的水運用を始めるため、今までのように各地区別の給水量ではなく、4 地区トータルの給水量として考えていくということです。
ところが、その 4 地区トータルの予定給水量は、平成 20 年から平成 24 年まで、毎年538,000? /日となっており、平成 19 年度の 4 地区それぞれの給水実績の合計572,203? /日を下回っているのです。
さらに、平成 19 年度の 4 地区それぞれの給水能力の合計815,760? /日を、実に277,760? /日も下回る始末です。八ッ場ダムの水利権は40,608? /日ですから、その 7 倍近くもの水が余っている計算で、もはや八ッ場ダムの必要性は完全に崩れ去りました。
企業庁はことあるごとに、「景気が上向くかもしれない」「異常気象による渇水が起こるかもしれない」と強弁しますが、今後保有水源の66%(538,000÷815,760)
しか使わず34%も余っているのに、渇水を心配してさらなる水源を、保有水源の5%にも満たない八ッ場ダムに求めるというのは常軌を逸しています。また、新しい企業の参入で水源が足りなくなるなどという憶測は、希望的観測を通り越して「妄想」でしかありません。
4.平成 16 年度「水道水源開発等施設整備事業の再評価」
被告準備書面17の38P で言及されている、千葉県水道局が平成 16 年度に行った八ッ場ダム事業の再評価とは、厚生労働省から国庫補助を受けている水道施設整備事業を 5 年ごとに見直す作業です。被告は準備書面で、水道局はこのように様々な見直しを行っているのだと胸を張っていますが、実態は威張れるようなものでは全くありません。
まず、学識経験者の第三者から意見聴取をしたとありますが、実際は通常設置されている「千葉県水道局事業懇談会」のメンバー5 人がそのまま横滑りをしているだけです。5年に 1度という大きな意味を持つ再評価ですから、規模を拡大したり、せめてダムに精通している人を新たに加えるなど、やるべきことを県は全くやっておりません。
実際、この再評価は通常の「千葉県水道局事業懇談会」の第 10 回目として行われ、時間もわずか 1 時間です。議事録を読んでみると、驚いたことにたったの 3ページで、ほとんど議論らしい議論もなく、職員の説明を聞くだけで終っています。
これで再評価したとは到底言えません。
更に、委員に前もって配られた資料には、人口と水需要の動向が今後も増加するとしか書かれておらず、委員が適切な判断を下すことは不可能です。例えば、添付資料の平成 7 年から 27 年までの水需要の動向表には、一人 1 日平均使用水量が平成 15 年までは 240 リットル台を推移しているのに、平成 17 年の予測値がいきなり 254.3 リットルに跳ねあがり、平成 22 年は 260 リットル台に突入しています。
このような一方的な資料で委員を誘導するとは、再評価の名前にも値しないのではないでしょうか。
大野博美
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