「利根川水系利根川・江戸川整備計画(原案)」公聴会での公述 

 自民党政権が復活し、人からコンクリートへ逆戻り。国土交通省関東地方整備局は、八ッ場ダム建設のお墨付きを得ようと「利根川・江戸川有識者会議」を再開しました。
ところが、会議で出されたダム懐疑派の意見を無視し、十分な議論もなされぬまま「利根川水系利根川・江戸川整備計画(原案)」を発表しました。
そして、この原案に対するパブリックコメントの募集と公聴会を行いました。
千葉の会からは、2月24日(日)の公聴会に4人、25日(月)に1人参加し、下記の通り公述してきました。



村越啓雄 公述 (PDFファイルが開きます)



「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」(以下河川整備計画(原案))についての陳述意見

坂倉敏雅 (千葉県柏市)


1 事前に提出した応募用紙に記載した論点は河川整備計画(原案)にそったものですが、その後2回の有識者会議(第8回、第9回)が開催され重要な議論が交わされています。その内容は整備計画(原案)の部分を構成するものであると認識して陳述をいたします。

2 今回の河川整備計画策定の前段をなす2006年から2008年のステージでは利根川水系全体を視野に入れた河川整備計画の策定が予定されていたはずでした。すなわち利根川・江戸川水系、鬼怒川・小貝川水系、霞ヶ浦、渡良瀬川、中川・綾瀬川のブロックに分けて議論を進めるはずですが、今回は利根川・江戸川水系に限定した河川整備計画が提示されました。利根川水系全体を視野に入れた河川整備計画策定作業についての見通しを明らかにしてください。

3 河川整備計画(原案)の策定経過と有識者会議の運営について
 今回の河川整備計画(原案)の策定のために旧聞4回の会議(最後は2008年5月)が開催されています。2009年の政権交代に伴う八ツ場ダム建設にかかわる一連の経緯についてはここで繰り返す余裕はありませんが、河川整備計画の策定を促す(野田内閣の)内閣官房長官の裁定が契機になったことは記憶に新しいところです。有識者会議を2012年9月25日に再開、爾来3回が開会されましたが衆議院解散・総選挙の情勢が明らかになると有識者会議の開会は続けて延期となり、再度の政権交代後の2013年の2月急遽河川整備計画(原案)なる文書が提示されて今回の意見公述の対象とされました。国土交通大臣は早々と(先の裁定に縛られることなく)本体工事着手を言明しています。
 再開後3回の会合は治水対策に係る目標流量の設定、すなわち八ツ場ダムの位置付が主たる論点となりましたが、提起された疑問はタナ晒しの状態で一方的に打切りのまま、今回のパブリックコメントおよび公聴会の開催のアナウンスメントとなりました。直近の第8回(2月14日)第9回(2月21日)有識者会議では改めて以下で触れるダム問題に直接かかわる洪水目標流量の数値設定の方法論について、是とする委員と疑義を提起する委員の間で論議がありました。その論争を聞くものにとっては、その是非についての疑問を禁じえないものでした。同時にこの間の有識者会議の運営において示された関東地方整備局の事務局としての運営の手法と姿勢は、“再度の政権交代を背景とした強権的な行政手法ではないか”と批判せざるを得ないものでした。合意形成の重要な階段の一つとして設定されている有識者会議に参加した有識者委員および関心を寄せた傍聴者を含む市民の信頼を損なうものでありました。

4 河川整備計画(原案)における八ツ場ダムの位置づけについて
 ダム建設についての根拠とし河川整備の目標を年超過確率1/70~1/80とし、その水準に相当する治水の目標流量を基準地点八斗島において17,000㎥╱秒としています。この数値の妥当性については利根川水系の治水関係資料にもとづく疑義、また導出にあたって学術的手法の妥当性についてもなお論争の余地があると考えざるを得ません。もしこの数値をより低水準に設定できれば、治水上ダムは不要となることも考えられます。

●河川整備計画(原案)の補足説明資料(第9回会議)p2に提示されている<洪水調節施設(八斗島地点上流)>なる表で、もし治水の目標流量を14,000㎥╱秒と設定すれば、(吾妻川、烏川・神流(かんな)川および奥利根の)既設ダムの調節容量で十分カバーすることが可能であり、八ツ場ダムの必要性を主張する根拠は失われるはずです。15,000㎥╱秒の設定でも昭和24年のケースを除いて対応が可能です。

●複雑で多数の変動要因のある自然の現象を数値的なモデルで近似した論争では、モデル自体の妥当性やその結果の評価をめぐる意見の相違はあり得ることです。(これらのモデルにより算定される目的事象の数値の振れ幅の範囲はどの程度のものなのでしょうか?)
因みに国土交通省が主張の柱としている日本学術会議による河川流出モデル・基本高水の検証に関する学術的な評価報告(2011年9月)における付帯意見において、“既往最大洪水流量の推定値、およびそれに近い値となる200年超過確率洪水流量の推定値と、実際に流れたとされる流量の推定値に大きな差があることを改めて確認したことを受けて、これらの推定値を現実の河川計画、管理の上でどのように用いるか、慎重な検討を要請する”とあります。

●議論を尽くした結果は受け入れなければなりませんが、その過程について公正な手続きを欠くことは許されません。有識者会議における委員からの問題提起を十分受け止めることなく議論を打ち切り、河川整備計画に盛り込もうとするのであれば、それは有識者会議の存在を国交省自らないがしろにするものではありませんか~? 有識者会議は政策決定機関ではなく、意見を聞く場であるという認識であれば、なお一層十分な議論が求められていると思います。ダムの位置づけについて再検討を求めます。

5 河川整備計画における堤防、河道、調整池等の位置づけについて
 利根川および江戸川における堤防の整備を必要とすると国土交通省が認識している箇所の総延長距離は左岸・右岸を含めて210㎞(整備計画資料からの公述人自身による集計)に及んでいます。河川整備の喫緊の要請として明確な課題である堤防整備などに優先して取り組んでいただきたいと考えます。

6 河川整備のロードマップの大要を示してください
 提示されている整備計画において整備の対象区間および対象期間(概ね30年)は示されました(第3章)。特に洪水、高潮等による災害発生の防止または軽減のための洪水流下対策(堤防整備、河道掘削、江戸川分派、洪水調節容量確保)、浸透・浸食対策、高潮対策、超過洪水対策、地震・津波遡上対策、そして江戸川の内水対策、危機管理対策が掲示されています。事業費予測として概算8,600億円(関東地整)との説明がありました。その配分内訳と施策の優先度も示してください。
 
7 公共事業としての八ツ場ダム計画
●八ツ場ダムの歴史は長い、長すぎたと言うべきです。ダム建設地点の人たちに苦難の道を強いてきた歴史です。(1947年)カスリーン台風がもたらした利根川流域の洪水被害を契機として、洪水調節を行うダムを利根川上流に建設する計画がつくられ、その一つとして(1952年)八ツ場ダムが構想されました。一旦立ち消えになったダム構想が1960年代の高度成長期の首都圏の生活用水および工業用水の供給をまかなうため、(1965年)治水と利水用多目的ダム構想として再登場しました。爾来半世紀、その間、ふるさとの喪失に反対する人たちの運動は、国策を楯にした国と県の力の前に終息し、(1985年)ダム建設を柱とする地元再建プランが策定されました。しかしその後のダム建設の計画と地域の再構築のプランは順調に進捗してきたのでしょうか?

●基本計画は3回にわたって変更され、工期は当初予定の2000年度から、2010年度、さらに2015年度までに、建設費推計は2,110億円から4,600億円へと変更されました。
地域を支える人が流出し、地域社会が再構築できるかどうかが疑問視される状況が進んでいます。
加えてダム完成後の貯水池周辺の地すべりの危険性もつとに指摘されています。
基本計画の再度の変更もやむなしと想定される事態になっています。

●今回策定しようとしている河川整備計画(原案)に盛り込まれたダム計画は、
上に触れたような半世紀以上におよぶ事実上の経緯があります。そのダム計画がはらむ重さが、今回の河川整備計画の策定に抜き差しならぬ桎梏となっているのではないかと考えざるを得ません。初めにダムありき、よってそのダム計画を正当化しない河川整備計画はあり得ないということではないのかと~?
ダム建設計画が河川整備計画をゆがめたものにするようなことがあってはならないはずです。

●今回、ダム問題を考える機会をもち、こころの底で覚える痛みがあります。それは国交省の計画を受け入れてダムの完成を待っている地元の人たちのことです。そのことをもって私たちの主張を取り下げることはできない、致しませんが、このような地域に苦難を強いる公共事業は二度と繰り返してならないことを訴えて陳述を終わります。

●なお河川環境整備については時間がなく触れることができませんでした。
パブリックコメントに譲りたいと考えています。

(了)




利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)に対する意見

服部かをる


 まず、「有識者会議」のあり方、進め方に大変問題があると思います。9月25日に再開されましたが、1~2週間に1回開催し、一回の時間が2時間という強行スケジュールです。こんな拙速なやり方でいいのでしょうか。しかも途中で、予定していた会議を9回も中止しました。委員の方々は、やりくりして何とか確保した日程を突然キャンセルされ、さぞ大変だったことと思います。
 私は、「有識者会議」を4回傍聴しました。この会議にダム懐疑派の委員が入り、少しはまともな議論が展開されるのではないかと期待しました。実際、数人の委員から、もっともな疑問、意見、提案が出されましたが、それに対して、きちんと取り上げ、十分に議論をするということがなされていません。本来、座長が、出された問題を整理し、議論を促すべきですが、事務局任せで、役割を果たしていません。それどころか、「この会議は、学識経験を有する委員の皆様方からご意見をお聞きする場です。何らかの決定を行っていただく場ではありません」という事務局のことばを一緒になって繰り返すばかりです。これでは、会議をやる意味がなく、時間と労力と税金の無駄遣いです。国の会議というのは、これが当たり前なのでしょうか?国交省の職員の方々もあの場に大勢待機していますが、このような会議の進め方はおかしいと思っている職員もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、出された問題の検討もされず、中途半端な状態のままにもかかわらず、「整備計画原案」が突然出されたことに驚きましたし、納得できません。そして、この「原案」には、せっかく出された意見が全く反映されていません。
アリバイ作りの会議はやめ、「有識者会議」のあり方を変えて民主的な運営をし、ダム建設ありきではなく、実現可能な対策について充分時間をかけ議論し、整備計画をつくり直すよう求めます。その際、本当に住民の安全を考え、また後世に悔いを残さないようにと真剣に考え、参加している委員の意見に耳を傾けてください。 
今までに、いろいろな意見が出されました。例えば、
「会議は2時間ではなく、4時間ぐらい使って議論したい。災害対策はどうあるべきか議論したい」「河川工学に限定し、治水安全度という特定の数字にこだわることのリスクがあるのではないか。真の安全性を確保するには、多様な対策が必要。もっと柔軟にいろいろな英知を集めて議論すべき」「目標流量を設定してから計画策定することに反対である。治水のあり方を根本から考えるべき」「利根川本川だけではなく、水系全体を含めて議論すべき」「貯留関数法も総合確立法も問題がある。60年の観測データがあるのだからその流量を基に目標流量を出せばよい。森林の保水力を考慮すべき」「2040年にはメンテナンスだけで新規事業はできない。時間と財政に制限がある中で、30年でできることが本当にダムなのか議論すべき」「資料として出されている洪水氾濫図は、溢れていない所を溢れているとしている。非科学的な資料であり撤回せよ」等々です。素人にもわかりやすい、説得力のある意見です。どうか無視しないでください。
 
 次に、ヤマトシジミとウナギについて述べます。原案を見ますと、環境については、「河川環境の整備と保全に関する現状と課題」「同目標」「同事項」と3か所ありますが、ヤマトシジミが生息しているという記述のみで、ヤマトシジミとウナギが激減している事実とその原因についての記述がありません。
 先日、研究者のお話をうかがいました。ウナギはとうとう絶滅危惧種になってしまいましたが、利根川水系では、最盛期には約1000tだった漁獲量が2010年にはわずか16トンと最盛期の0.5%に減少したとのことです。原因は、ダム建設と考えられ、利根川水系のダム累積数と漁獲量との間には高い相関関係が認められ、漁獲量減少率はダム1基につき15%だそうです。決して乱獲が原因ではありません。
ヤマトシジミはかつて全国一の生産量を誇り、1970年には利根川水系の漁獲量は、霞ヶ浦を合わせて41500t(全国の74%)だったが、2010年はわずか5tしか獲れなかったそうです。ヤマトシジミの減衰傾向はウナギと一致しています。シジミは河口堰やダムのない所でも減少していることから、河川湖沼開発事業全体が、ウナギをはじめとする水域での生産に影響を及ぼしてきたことになるとのことです。以上申し上げたことも、きちんと認識し、事実として原案に記述すべきと考えます。また、地域の現状をよく知っている研究者や市民団体の方々と一緒に対策を考え、計画に盛り込むべきです。
講師の方は「河川湖沼の開発は、生物多様性を破壊しつくした。治水効果のメリットと生物多様性損傷等のデメリットを評価したうえで、河川整備計画が策定されなければならない。事前・事後の生物多様性影響評価が必要だ」と発言されました。是非ともそのようにしていただきたいと思います。



・八ッ場 公述

千葉県佐倉市 中村春子です。
利根川水系河川整備計画(原案)策定のための利根川・江戸川有識者会議を傍聴し、余りの公正さを欠く会議の進め方に、ただただあきれました。委員の質問に真摯な答えも出さないままのこの整備計画原案は、正当性のあるものとは認識できませんが、以下、利根川水系河川整備計画(原案)について、私の意見を述べます。

(1)私は2006年から2008年にかけての有識者会議を傍聴いたしました。2006年12月18日の第2回利根川・江戸川有識者会議で、関東地方整備局は「意見を聞いて原案を修正し、その修正原案について再度意見を聞き、そういったことを何回か実施して、河川整備計画案を取りまとめる」と言明しています。
公の場で責任者が言明したことについては、当然のことながら実行されなければなりません。1997年の河川法改正にあたり、関係住民の意見反映について国交省河川局長は、国会の質疑でも「関係住民の意見を言いっ放し、聞きっ放しというのでは全く意味がない」「河川整備計画には関係住民の皆さん方の意見を反映していくと考えている」と答弁しています。当時の河川局長の答弁に対して、今の河川管理者は、この河川整備計画に私たち関係住民の意見を反映させる責務があります。
1997年9月、衆議院建設委員会でも、今述べた通り政府委員が答えています。今後の利根川河川整備計画の策定において、この約束をどのように守っていくのか、明らかにすべきです。いかがですか。

(2)利根川本川と支川は相互に関係しているにもかかわらず、なぜか今回は本川だけの計画です。2006年11月から2008年5月に行われた利根川水系河川整備計画の策定作業では、利根川水系を利根川、江戸川、支川の鬼怒川、小見川、霞ヶ浦、渡良瀬川、中川、綾瀬川の5つのブロックに分け、各々に有識者会議を設置しています。しかし、その後、理由不明のまま中断されていますが…。
 なぜ関東地方整備局は、本川関係だけを審議する利根川・江戸川有識者会議の開催だけで終わらせようとしているのですか。
 支川も含めての整備計画策定となると、準備等、長い期間を要することになり、本川だけでごまかして、八ッ場ダム本体工事着工の条件をクリアしようと画策しているかのようです。非常に卑劣なやり方であるとしか言いようがありません。
 4年ぶりに開かれた今回の策定作業で示された整備計画案は、2006年案と大きく変わっています。治水安全度は1/50から1/70及び1/80、治水目標量15000㎥/秒→17000㎥/秒、その他、河道対応流量は13000㎥/秒から1000㎥/秒の増、ダム等による洪水調節量約2000㎥から1000㎥増の3000㎥/秒です。すべて八ッ場ダムを位置づけしやすくするための数字の引き上げでと考えます。有識者会議の中で、治水目標量の是非、この計算の洪水流出モデルはきわめて過大な流量を算出するもので、不自然なものであると指摘されていましたが、科学的な論拠のある答弁はありませんでした。
 大事な指摘は平然とすり抜け、あげく「有識者会議は議論の場ではない。意見をお聞きする場である」と、繰り返し事務局は言っておりました。これが、国が住民の命を守るための河川整備計画策定の場の発言でしょうか。「何でも言わせておいて、あとは整備局側の思うようにする」との思惑が透けて見えていました。納税者として、この会議のあり様を是認することはできません。
 計画案の事業内容を見ますと、八ッ場ダムの残事業費を含めて8350億円を要すると算出しています。八ッ場ダムだけでも、地すべり対策など、増額は必至です。2009年度の国土交通白書では、過去に作った社会資本の維持管理費、更新費が次第に増加し、2037年度には投資可能額に達してしまうことが記されています。このままでは新規事業どころか、維持管理費、更新費用さえ不足するのではないでしょうか。湯水のように、巨額な予算を役立たない事業に無駄に使うのではなく、住民の安全を守るために治水対策を厳選すべきです。
 この河川整備計画案は、次の世代に負の遺産と借金ばかりを残すものであり、優れた仕事であると評価することはできません。もっと真摯に現実と向き合い、計画案をやり直してください。環境を破壊するのではなく、美しい環境と豊かな自然を次世代に残せるよう、日々の生活の中で現実と向き合っている住民と協議してください。
 最後に一言申し添えます。
 私たちは流域住民として、また未来の子どもたちに責任を持った生き方をしたいと有識者会議を傍聴してきました。しかし、関東地整の余りにも非民主的、理不尽な、不誠実な会議の進め方に、思わず抗議の声を上げました。人間として当たり前の行為なのです。その度に「進行の妨げになりますので…」と注意があり、傍聴の市民を不審者を取り囲むように居並ぶ職員が駆けつけ、「出てもらいます」と警告に来ていました。進行の妨げをしていたのは、関東地整の不誠実な会議の仕切り方そのものであり、宮村座長の局側の意向に沿った采配ぶりが目に余ったからなのです。主権者は市民ですよ。今後、この様なことがないように…。



武笠紀子 公述

1、ダムに偏る治水は検証すべし

利根川水系に数多く造られたダムが、現実に治水に果している役割が検証されていない。同様に建設予定のダムが治水に役立つかどうかの科学的検証も明らかでない。建設計画があったのに中止になったダムの治水についての検証もない。その上八ツ場ダムの治水効果についての考察は杜撰である。

2、洪水域について嘘(虚偽の数値)をついた。

八ツ場ダム建設のために、嘘をついて洪水地域を広げた事実が明らかになったにも関わらず、きちんと謝らない。責任をあいまいにしたまま別の数値を出してきて帳尻を合わせようとした。これでは、他の根拠とされる様々な数字も信用できない。


3、江戸川左岸が心配。スーパー堤防は実現性がない。

私は江戸川左岸の松戸市に住んでいる。左岸堤防が気になるが、ダム建設に頼る治水では堤防の補修に予算がまわらない。堤防は日頃のメンテナンスが大切である。実際に堤防が漏れている場所があると聞いている。笹子トンネルの事故のようにメンテナンスにお金をかけないと大きな災害につながる。堤防の点検にも多額の人件費がかかるだろう。しかしスーパー堤防は止めるべきだ。見学したことがあるがほんの一部が出来ているだけ、これ以上は物理的にも金銭的にも実現性のない計画である。


4、東京中心の治水ではなく、全ての地域の治水を考えるべき

先程も言ったが、私は江戸川左岸の松戸に住んでいる。他の計画でも見られるが、地方(東京以外)を犠牲にして首都東京だけを守ろうとするのは許せない。江戸川については、東京がわの右岸堤防は強化しているらしい。そして東京を守るために、中川や荒川からの巨大な水路を造って洪水を江戸川へ流し、千葉県側へ洪水を起こすとも聞いている。本当だとは思いたくないが疑わしい。この計画でも東京中心の考え方がとられている。地方のことも同様に考慮すべきだ。

5、一部の河川だけではだめ、支流全てを考慮すべき

 関東平野を流れる利根川水系には江戸川以外にも関連している河川は多い。全ての支流を河川整備計画に入れなくては治水とはならない。江戸川だけではどこの地域の治水を考えているのか?やっぱり東京のことだけなのかと思ってしまう。利根川に関わる全て地域の河川も計画に入れるべきだ。

6、八ツ場ダムは千葉県には負担ばかりで治水メリットがない

利根川水系の最下流の千葉県では八ツ場ダムによる治水効果はわずかなものである。しかし、根拠もはっきりしないのに治水についての負担金を求められている。千葉県の財政は厳しい状況にあり、必要ないものに支出する財政的余裕はない。

7、公共インフラの老朽化問題はダムや堤防にもある

先程述べた笹子トンネル事故ではないが、日本の公共インフラの老朽化は深刻な問題である。メンテナンスにも更新するにも莫大なお金がかかる。これ以上公共施設を増やせばさらにその費用は増える。更新出来ずに崩壊するダムなどがでるかもしれない。人口は減り、高齢者が増えてこどもが減り続けている。労働人口・生産人口が今後さらに減少していくことは明らかで、アベノミクスなどと言ってもこの現状は変わらない。負担を将来へ押し付けてはならない。

8、優先順位を考えよ
ダムか堤防かの優先順位もあるが、他の視点でも考えてほしい。
「河川整備計画」作成の過程で、河川計画課と有識者会議のメンバーの考えより、流域市町村や流域住民の意向(パブコメや公述)、特に科学的データを示して指摘している専門家の意見を優先させるべきである。特に専門家については、有識者会議に参考人としてよんで話しを聴く姿勢がほしい。
国民は、3.11以降、全国に54基の原発があることを知って驚いた。私は「脱ダム」が話題になった時に、ダムが全国に驚くほどたくさん作られていることを知った。しかし、まだダムが大きな事故をおこしてないため、一般国民にはダムが異常に多い事実はあまり知られていない。
 これからの日本(河川整備)を良くしようと考えているのは誰なのか。最後に責任を持ってやるのは確かに河川計画課の方々である。しかし無償で社会の問題として取り組んでいる人々の意見(パフコメや公述)も必ず計画に取り入れてほしい。互いに協力して良い計画が作られればと思う。

八ッ場ダム本体工事費予算案計上決定への抗議声明等、最近の動き 

 12月23日、政府は八ッ場ダム本体工事費7億円(関連費用を含めると18億円)を予算計上することを決定しました。
 12月8日に、民主党議員有志から前原政調会長に八ッ場ダムの中止を求める意見書が提出されるなど様々な動きがあり、前原政調会長も予算計上に反対していましたが、河川整備計画の策定などを国土交通省に求めることを条件に認めてしまいました。
 12月24日、八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会・各都県の会は、この決定に対する
「抗議文」を野田内閣総理大臣・前田国交大臣宛に送りました。




平成23年12月24日


内閣総理大臣 野田佳彦 様
国土交通大臣 前田武志 様
             
八ッ場ダムをストップさせる群馬の会  代表 真下淑恵
八ッ場ダムをストップさせる茨城の会 代表 近藤欣子
八ッ場ダムをストップさせる千葉の会 代表 村越啓雄
八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会 代表 藤永知子
ムダなダムをストップさせる栃木の会 事務局長 伊藤武晴
八ッ場ダムをストップさせる東京の会 代表 深澤洋子
八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会   代表  嶋津暉之


八ッ場ダム本体工事費の予算案計上決定への抗議声明


 12月23日、政府は八ッ場ダム建設再開のための本体工事費の予算案計上を決定しました。八ッ場ダムの不要性、不当性を長年訴え続けてきた私たちは、この決定に対して心底からの怒りをもって抗議します。
本体工事費計上は、「民主党としては反対であるが、最終判断は政府にゆだねる」として決定されたものですが、現政権は民主党政権であり、その民主党が反対する決定を行う現政権とはいったい何なのでしょうか。民主党の衣をかぶった官僚支配政権であること、すなわち、官僚の官僚による官僚のための政権であることを物語っています。

 22日の午前、民主党と国交省の意見対立を調整するため、藤村修官房長官から「①利根川水系河川整備計画の早急策定とその洪水目標流量の検証、②ダム中止後の生活再建支援法の次期通常国会への提出を踏まえて、本体工事を判断する」という裁定が示され、これを前田国交大臣が「つつしんで受ける」ことを表明しました。
ところが、前田大臣は午後になると、本体工事判断の2条件などなかったかのように、本体工事費予算計上を発表し、その後、直ちにダム予定地の群馬県長野原町に行って報告を行い、ダム推進派の群馬県知事、地元町長らから大歓迎を受けました。この群馬県知事等への報告は23日の政府・民主党三役会議で、建設再開の方針が覆ることがないように、その方針を既成事実化するものであり、政府の決定手続きを軽んじる行為を行った前田大臣の責任はきわめて重大です。すべて、官僚たちが描いたシナリオ通りに演じる役者のようでした。そして、国交大臣が発表した方針には上記の2条件は今後の取り組みとして付記されているだけでした。
 
 裁定を「つつしんで受ける」と言いながら、それを平然と無視した前田大臣の今回の行為は、政治への信頼を根底から失わせるものであり、政治家としてあってはならないことです。国交大臣辞任にも値することです。官僚たちの振り付け通りに動くのではなく、自らの良心に従って行動されることを忠告します。
国交省が無視しようとも、官房長官の裁定を蔑ろにすることは許されないことであり、その裁定に従い、利根川水系河川整備計画の早急策定とその洪水目標流量の検証に直ちに取り組み、その結果により、八ッ場ダムの是非が明らかになるまで本体工事予算を凍結することを求めます。もう一つの条件である、生活再建支援法の次期国会への提出も、これまでのようになおざりにすることなく、確実に取り組むことを求めます。

 今回、関東地方整備局が行った八ッ場ダムの検証は、建設再開の結論が先にある茶番劇というべき検証でした。治水利水の両面で八ッ場ダムの不要性はすでに明らかです。利水面では水道給水量が減り続け、その規模がますます縮小していく時代において八ッ場ダムによる新規水源開発が必要であるはずがありません。治水面でも八ッ場ダムの実際の治水効果はわずかなものであり、脆弱な堤防の強化などの喫緊の治水対策をなおざりにして巨額の河川予算を不要不急の八ッ場ダムに投じ続けることは許されることではありません。
そして、八ッ場ダムの予定地は地質がひどく脆弱であり、ダムを造って貯水し、水位を上下すれば、奈良県の大滝ダム以上の規模で地すべりが誘発されることは必至です。国交省が計画している程度の地すべり対策ではとても対応できるようなものではありません。ダム完成後に地すべりが起きても官僚たちはだれも責任をとりません。大滝ダムの場合もそうでした。結局は裁判所が国交省の過失を断罪しました。
八ッ場ダムは必要性がなく、様々な災いをもたらすダムであることから、私たちは八ッ場ダムの中止を強く求めてきました。そして、裁判でもそのことを訴えてきました。
 たとえ本体工事予算が付いても、八ッ場ダムを中止すべきだという私たちの信念は何ら変わることはありません。
 私たちはこれからも八ッ場ダムの不要性、不当性を多くの人に伝えて、世論を喚起するとともに、裁判で6都県に対して八ッ場ダム事業からの撤退を求める判決が得られるよう、東京高裁での審理に力を尽くす所存です。
               
連絡先 八ッ場ダムをストップさせる東京の会 深澤洋子
                   〒187-0001 東京都小平市大沼町1-106-19
Tel/Fax 042-341-7524



 12月17日に行われた「住民訴訟7周年報告集会」では、下記の「アピール」が採択されました。  
      


・          

八ッ場ダム住民訴訟提訴7周年集会アピール:


○私たちが1都5県で住民訴訟を提起してから既に7年が経過し、現在は第二審で審理中です。この間、原告団、弁護団はもとより、多くの市民、良心的な学者や専門家、報道関係者、中央及び自治体議員などのご努力により、本事業が治水・利水の面で有害無益であること、大規模な地滑り/岩盤崩落の危険性が大きいこと、地元住民の生活再建が急務であることなど、多くの問題点が浮き彫りにされました。私たちが公表した無数の資料や主張は、後世に「恥かしくない」珠玉のようなデータの集積です。

○平成21年9月には、八ッ場ダム事業中止をマニフェストに明記した民主党が国民の圧倒的な支持を得て政権の座につき、前原新国交大臣が「八ッ場ダム中止」と明言され、正しい政策が実現すると期待しました。しかし、<政治主導>理念が実務面での具体策を欠いたため、官僚のシナリオによる形式的な「検証」が進み、建設中止公約の行方は非常に厳しいと思われます。

○今年の重要な動きとしては、官僚によるダム推進の形式づくりが加速されました。即ち、
(1) 河野太郎自民党議員の質問がきっかけとなって、基本高水の前提に疑問が生じた結果、馬淵国交相が基本高水の検証を依頼した日本学術会議は、前提条件の厳密な検証を省略して、官僚が恣意的に作成した基本高水/目標水量を「妥当」と判断しました;
(2) ダム事業の検証を委託されたダム事業者(国交省関東地方整備局)は、利水・治水ともあり得ない代替案と比較してダムが優位と答申しました、
(3) 公聴会とパブリックコメントが国民の意見を「聞き置く」だけの儀式に終わった一方、埼玉県議によるパブコメのヤラセが明らかとなりました、
(4) 関係自治体は、その結論だけを鵜呑みにして早期建設を叫んでいます。
(5) 「できるだけダムに頼らない治水政策」を検証するとして官僚が選んだ「有識者会議」は、形式的な検討と意味のない比較を認め「事業継続」を答申する一方、「ダム検証の在り方を問う科学者の会」が呼び掛けた公開討論会への参加を拒否しました。
(6) 前田国交相はそれらの報告を是とし、予算編成に間に合うよう年内に結論を出すと明言しました。
(7) 一方、民主党前原政調会長や八ッ場ダム分科会、国交省部門会議の議員の多くはダム事業中止を主張していますが、与党の方針としては未だ確立していません。

○私たちは、今こそ政治的な英断が不可欠だと考えます。国交大臣が、官僚の誘導で建設再開方針を出されても、<コンクリートから人へ><八ッ場ダム中止>を公約の柱に掲げ、国民の圧倒的支持を受けて政権交代を実現した民主党政権の責任として、<政治主導>によって建設中止を決断すべきです。そして、その決断を実行するための具体策が不可欠です。一部の権力と利権が密室内で国民の血税を配分する仕組みを根本から変えないとこの国に明るい未来はありません。
以上
2011(平成23)年12月17日
八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会/「ムダな」ダムをストップさせる栃木の会
八ッ場ダムをストップさせる群馬の会/八ッ場ダムをストップさせる茨城の会
八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会/八ッ場ダムをストップさせる千葉の会
八ッ場ダムをストップさせる東京の会



 12月19日、「マニフェストを順守し、八ッ場ダム建設中止を求める要請書」を野田内閣総理大臣他7人の政府要人に提出しました。





内閣総理大臣 野田 佳彦衆議院議員

マニフェストを順守し、八ッ場ダム建設中止を求める要請書


 私たちは、八ッ場ダムは無益で、しかも有害である、として「八ッ場ダム住民訴訟提訴7周年集会」に結集し、討議した結果、200余名及び下記7団体の総意として次を要請します。


 私たちは、八ッ場ダム事業が治水・利水の面で有害無益であること、大規模な地滑り/岩盤崩落の危険性が大きいこと、地元住民の生活再建が急務であることを、あらゆる機会に訴えてきました。

 2009年(平成21年)9月に、八ッ場ダム事業中止をマニフェストに明記した民主党が国民の圧倒的な支持を得て政権の座につきました。
前原新国交大臣が直ちに「八ッ場ダム中止」を明言され、国民こぞって、正しい政策が実現されると期待しました。
 しかし、その後は、事業推進大前提のシナリオによる形式的な「検証」が進み、建設中止公約の行方が不透明になっています。
 <コンクリートから人へ><八ッ場ダム中止>を公約の柱に掲げ、国民の圧倒的支持を受けて政権交代を実現した民主党政権の責任として、建設中止を決断すべきです。
 そして、その決断を実行するための具体策が不可欠です。一部の権力と利権が密室内で国民の血税を配分する仕組みを根本から変えないと、この国に明るい未来はありません。
 私たちは、今こそ政治的な英断が不可欠だと考えます。
 マニフェストを順守し、八ッ場ダム建設中止を決断することを要請します。
以上

2011(平成23)年12月17日

八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会/「ムダな」ダムをストップさせる栃木の会/
八ッ場ダムをストップさせる群馬の会/ 八ッ場ダムをストップさせる茨城の会/ 
八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会/ 八ッ場ダムをストップさせる千葉の会/
八ッ場ダムをストップさせる東京の会/ ほか参加者一同

連絡先:八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会 深澤洋子
          187-0001 東京都小平市大沼町1-106-19
  ℡/fax 042-341-7524



 12月19日、佐倉市議会で、市民ネットワーク提出の「国交省関東地方整備局に対して、八ッ場ダムに関する検証のやり直しを命ずることを求める意見書」が賛成少数で不採択となりました。





国交省関東地方整備局に対して、八ツ場ダムに関する検証のやり直しを命ずることを求める意見書



 八ツ場ダム建設の是非を巡り、国土交通省関東地方整備局は11月21日、「建設の続行が妥当」とする方針案を公表した。前田国交相は年内に最終判断を下すとされている。
 しかし、方針案がでるまでの「検証」経緯を見ると、極めて非科学的・恣意的、かつ不公正なものと断ぜざるをえない。
 まず「できるだけダムに頼らない治水」への政策転換を目的として設置された「今後の治水のあり方を考える有識者会議」は、ダム推進派の委員が複数入る一方で、ダム懐疑派の専門家は一切排除された。果たして、有識者会議が昨年9月に出したダム検証の実施要領には、ダム事業を推進してきた河川官僚の意思が色濃く反映され、おまけにそれに沿って作られた検証システムは、ダム事業者(関東地整)自らが検証するという二重に客観性に欠けたものとなった。しかも、治水・利水とも自ら全く精査を行わずひたすらダム推進を主張する関係6都県を参加させる一方で、ダム見直しを求める流域住民は検証の場から完全に排除された。
 このような経緯で今回示された「検証結果」には、以下の重大な問題点がある。
1.利水に関しての問題点
 首都圏全体に水余り傾向が顕著であり、余裕水源は東京で1日200万トン、千葉県では80万トンに達する。人口も国立社会保障・人口問題研究所によれば、2015年から減少傾向に入る。このような状況を全く無視し、「水が大量に足りない」という前提からスタートし、富士川から水を引くなどという荒唐無稽で巨額の費用がかかる代替案と比較して、八ツ場ダムの方が安いという結論を導き出すなど、到底科学的検証とは思えない。
2.治水についての問題点
 八ツ場ダム建設の根拠となった1947年のカスリーン台風が再来した場合、八ツ場ダムの治水効果が実はゼロであることを、08年、国交省自ら公表した。ところが今回の検証では、突如八ツ場ダムの流量カット能力を従来の2.6倍に引き上げた。多くの学者が計算根拠に疑問を呈しており、八ツ場ダムが有利になるよう数字が操作されたと言わざるをえない。
3.八ツ場ダム予定地の地盤の問題点
 建設予定地周辺は、浅間山の噴火により火山灰や岩屑が降り積もった脆弱な地層であり、今も昔も地滑り多発地帯である。そこにダムを造ること自体、危険極まりない。更に、代替地として30メートルもの盛土をした宅地造成は、ひとたび大きな地震が起きれば大災害が起きる危険な工事であることを、多くの地質学者が指摘している。 
以上のことから、国土交通大臣におかれては、関東地方整備局に対して検証のやり直しを命じ、中立的・客観的・科学的な検証ができる場を改めて設置することを強く要望する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
2011年12月19日
佐倉市議会

内閣総理大臣
国土交通大臣       宛



 12月20日、千葉県議会でも、「八ッ場ダム建設事業の中止を求める意見書」(共産党提出)が賛成少数で不採択。
市民ネット・社民・無所属を代表し、入江あき子が賛成の立場で下記の通り「討論」を行いました。





2011年12月議会 「八ッ場ダム建設事業の中止を求める意見書」に対する討論

        

12/20 入江晶子


 次に発議案第27号「八ッ場ダム建設事業の中止を求める意見書」についてです。2009年の選挙で民主党は「コンクリートから人へ」「八ッ場ダム中止」を公約の柱に掲げ、政権交代を実現しました。前原国交大臣の中止宣言を受け、八ッ場ダム中止と地元住民の生活再建を同時に求め20年来活動してきた私たちは公共事業のあり方に一石が投じられると民主党の政策転換に大いに期待しました。その後、国交大臣が次々と変わるなか、前原大臣の「予断なき検証」という言葉だけは引き継がれましたが、政治主導による抜本的な見直しは行われませんでした。客観的な検証を担保するはずだった有識者会議も事務局である国交省河川計画課の人選でダム懐疑派の学識者を排除、官僚のシナリオどおりに非公開の会議を重ね、結果的にダム推進に有利な検証ルールがつくられてしまいました。このルールに基づき八ッ場ダム検証が行われましたが、利水面では水余りの実情を無視、過大な水需要予測をベースとし、治水面では科学的根拠なくダムの治水効果を2.6倍に引き上げました。費用対効果についても利根川本川で60年間破堤はなく被害額はゼロにもかかわらず、八ッ場ダムがないと毎年4820億円の洪水被害が出ると検証しています。その一方でダム湖周辺の地滑りや代替地の崩落等への対策は議論されていません。検討の場に参加した関係6都県は国交省が示した工期延長や事業費増額に対して認められないとする一方で、ダム推進を大合唱し、「八ッ場ダムが最も有利」とする検証結果となったのです。その後のパブリックコメントでは全体意見の96%にあたる5739件が同一文書のコピーに署名だけであることが分かり、ダム推進派の埼玉県議によるやらせ問題が発覚しました。科学的客観的事実に目をそむけ、ダム建設ありきの結論を出したのは、いったい誰のためでしょうか。ダム利権につながる企業や政治家、或いは天下り先を温存したい官僚のためなのか。少なくとも私たち流域住民のためではないことは明らかです。

 国会では今まさに八ッ場ダム推進派と反対派の攻防が繰り広げられ、今週半ばにも政府民主党は結論を出すと報じられています。私たち1都5県議会議員の会メンバーもかねてからダム中止と地元の生活再建支援法案制定を求め、超党派でロビー活動を続けてきました。その上で敢えて申し上げますが、政府民主党におかれましては、自ら掲げた選挙公約の看板を簡単に取り外すことがあれば、再び民意が問われることを重く受け止めていただきたい。もとより八ッ場ダムは必要性がないばかりか災害を誘発する危険性も指摘されており、国も地方も巨額の税投入を行う余裕などないはずです。千葉県の建設負担金は昨年度までで427億円にのぼります。建設続行となれば、さらなる事業費の増加や工期延長に伴う基本計画の変更は避けられません。現在の総事業費は4600億円ですが、起債利息も含め、総額1兆円に上るとも試算されています。東日本大震災と原発事故の経験を踏まえ、私たちは従来の公共事業のあり方や価値観を見直す岐路に立たされています。これまではダム建設によって遠くの自然環境やそこに暮らす人々の生活・地域コミュニティを破壊し、水資源を確保してきました。しかし、これからはダムに頼らない治水政策への転換が求められており、世界の潮流は水循環の健全化、ダム撤去の時代です。日本においてもダム建設を前提にした不合理な水利権許可行政を改革し、暫定水利権の解消や水利権の転用こそ進めるべきです。実際、国の直轄ダムであった徳島の細川内ダムは2000年に中止、新潟の清津川ダムは2002年に中止となりましたが、その後も暫定水利権の許可は継続され、現在も使用されています。八ッ場ダム中止の場合も実際に使用されている暫定水利権が消失することはないという事実を踏まえ、建設負担金の返還問題も含め、関係6都県で現実的な対応を議論すべきです。仮にダムが完成してもその寿命は短く、砂が貯まる堆砂問題など維持管理費や撤去費用に多額の税金を投じなければなりません。これからは既存施設の維持管理費が嵩み、新たな社会資本整備に予算措置する余裕もありません。加えて災害復旧復興のために新たな財源も必要とされているところです。以上のことから、政府において八ッ場ダム建設事業の速やかな中止と関係住民の生活支援法案の早期成立を求め、本意見書案に賛成いたします。

八ッ場ダム検証の抜本的なやり直しを求める声明 

 国土交通省関東地方整備局による八ッ場ダム事業の検証が行われていましたが、9月13日に八ッ場ダムが最適の利水対策および治水対策であるという検証案が示されました。
これに対し、学者グループが検証の抜本的なやり直しを求める声明を下記の通り発表しました。




八ッ場ダム検証の抜本的なやり直しを求める声明


 八ッ場ダム計画は構想から間もなく60年になろうとする中、ダム本体工事着工の是非が問われている。この間、ダム予定地のかけがえのない自然と地域社会が破壊され、地質の脆弱さ、ダム計画の杜撰さにより工期延長、事業費増額が繰り返されてきた。
すでに3,000基近くのダムを抱えるわが国では、生態系の破壊、地すべりの誘発など、ダム建設によってもたらされる様々な問題が知られるようになり、ダム建設を主とした河川行政の見直しが課題となっている。
こうした情勢を受け、民主党政権は八ッ場ダムの予断なき検証を約束し、国民はその推移を注視してきた。しかしながら、2011年9月13日に関東地方整備局が示した八ッ場ダム検証結果(案)ならびに検証過程は、「予断なき検証」とは程遠く、科学性・客観性が欠如したものといわざるを得ないものであった。
以下の理由により、私たちは八ッ場ダム検証の抜本的なやり直しを求める

 第一に、事業の主目的の一つである利水について、水需要の減少傾向が明らかであるにもかかわらず、その実績を無視した架空予測をそのまま認め、そのことを前提とした非現実的代替案との比較しか行っていない。現実と乖離したデータを用いての検証は、科学的といえるはずがない。

 第二に、いま一つの主目的である治水についても、代替案の事業費が跳ね上がるように八ッ場ダムの効果を過大に評価した上での代替案との比較しか行っておらず、利根川の治水についての本質的な議論は皆無の検証作業であった。特に、カスリーン台風豪雨に対して、八ッ場ダムの洪水調節効果がまったくないことは国交省も認識しているところであるが、これについて検証されていない。また、今年の台風12号のように「和歌山県のダムが記録的な豪雨によって治水機能を失ったが、八ッ場ダムが自然の猛威に対応できるものなのか」、「近年多発している局地的な豪雨に対して八ッ場ダムはどれほど効果的なのか」といった、流域住民が生活レベルで感じる疑問には何も答えていない。

 第三に、ダム本体や周辺地域環境で懸念されている災害対策が不問のままである。八ッ場ダム予定地は、わが国有数の活火山である浅間山と草津白根山の下流に位置する。江戸時代・天明三年(1783年)の浅間山の大噴火では泥流が流れ下り、多数の死傷者のあった地域である。八ッ場ダム完成後に浅間山の大噴火が起こった場合、ダム湖やダム本体、下流域にどのような影響が起こりうるのか、検証されていない。また東日本大震災のような巨大地震が生じた際、ダム本体の安全性は担保されているのか、ダム湖湛水後の地すべりの危険性にはどう対応するのか、これまでに例のない30mの超高盛り土により造成された代替地は崩落しないと確約できるのかなど、最近の地震活動を考慮した議論はなされぬまま検証結果が出されている。自然の猛威によってダム事業が生命・財産を危機にさらしうることへの対策が不可欠であるという事実を直視しない検証作業が、果たして「予断なき」「科学的・客観的」検証と言えるのか。
 
 現在の八ッ場ダムの検証は、事業を進めてきた関東地方整備局みずからが行ってきた。流域住民の生命・財産を守る利水・防災のためのダム建設の是非を検討する検証は、真に科学的・客観的な検証を可能とする第三者機関の設置が不可欠である。従来の河川行政に批判的な専門家も加えた、公開の場で八ッ場ダムの公正な検証を実施することを要請する。

2011年10月26日


呼びかけ人
今本健博(京都大学名誉教授・河川工学)
宇沢弘文(東京大学名誉教授・経済学)
牛山積(早稲田大学名誉教授・法学)
大熊孝(新潟大学名誉教授・河川工学)
奥西一夫(京都大学名誉教授・防災地形学)
川村晃生(慶応大学教授・環境人文学)
関良基(拓殖大学准教授・森林政策学)
冨永靖徳(お茶の水女子大学名誉教授・物理学)
西薗大実(群馬大学教授・地球環境学)
原科幸彦(東京工業大学教授・社会工学)
湯浅欽史(元都立大学教授・土質力学)
                     
                     
賛同者(10月23日現在59名)
青山貞一(東京都市大学・環境政策)、足立久男(東京農業大学・地質学)、
阿部祥人(慶応大学・考古学)、池田こみち(環境総合研究所・環境政策)、
泉桂子(都留文科大学・森林計画学)、岩松研吉郎(慶応大学名誉教授・日本文学)、
上田邦子(滋賀県立大学・土壌生物学)、鵜飼哲(一橋大学・フランス文学)、
大塚泰介(琵琶湖博物館・水産生物学)、荻野芳彦(大阪府立大学名誉教授・農業水利)、
小野有五(北海道大学・環境科学、地理学)、春日正伸(山梨大学名誉教授・応用物理学)、
鬼頭秀一(東京大学・環境倫理学)、久保田喜裕(新潟大学・地質学)、
五味渕典継(大妻女子大学・日本語文学)、坂巻幸雄(元工業技術院地質調査所・地質学)、
柴崎直明(福島大学・水文地質学)、嶋津暉之(元東京都環境科学研究所・衛生工学)、
島本美穂子(法政大学・経済学)、関耕平(島根大学・地方財政論)、
関根孝道(関西学院大学・環境法)、瀬戸昌之(東京農工大学名誉教授・環境学)、
瀬山士郎(群馬大学名誉教授・数学)、高田直俊(大阪市立大学名誉教授・土木工学)、
鷹取敦(環境総合研究所・環境予測)、高野庸(群馬大学名誉教授・科学教育)、
高橋満(東京大学名誉教授・経済学)、高安克己(島根大学名誉教授・環境地学)、
滝沢俊治(群馬大学名誉教授・物理学)、竹内智(山梨大学・環境科学)、
竹本弘幸(拓殖大学・地質学)、田中学(東京大学名誉教授・農業経済学)、
辻本利雄(明治薬科大学・基礎化学)、寺西俊一(一橋大学・環境経済学)、
直野敦(東京大学名誉教授・言語学)、中村庄八(地質学)、深澤英隆(一ツ橋大学・宗教学)
永橋為介(立命館大学・コミュニティデザイン論)、中山俊雄(応用地質研究会・応用地質)、
中川鮮(元京都大学防災研究所・砂防工学)、中山弘正(元明治学院大学学院長・経済学)、
西川伸一(明治大学・政治学)、野村哲(群馬大学名誉教授・地質学)、
橋山禮治郎(千葉商科大学・政策評価論)、濱田篤信(霞ヶ浦生態系研究所・水圏生態学)、
古沢広祐(國學院大学・環境社会経済学)、保母武彦(島根大学名誉教授・経済学)、
松本武祝(東京大学・農業史)、町村敬志(一橋大学・社会学)、
三木敦朗(信州大学・森林政策学)、村上勝彦(東京経済大学前学長・経済史)、
村上修一(滋賀県立大学・造園学)、森聰明(元弘前大学・触媒化学)、
柳下登(東京農工大学名誉教授・農業生物学)、柳沢透(慶応大学・経済学)、
矢吹晋(横浜市立大学名誉教授・中国経済論)、山口幸夫(原子力資料情報室・物理学)、
山本美穂(信州大学・森林政策学)、吉川成美(早稲田環境塾・農業経済学)

八ッ場ダム千葉裁判判決に対する抗議声明 

八ッ場ダム千葉裁判判決に対する抗議声明


2010年1月19日


1) 本日、千葉地方裁判所は八ッ場ダムに関する公金支出差止等請求住民訴訟に対する判決を下した。判決は、原告住民の主張を全く理解することなく、不当にも以下述べるように原告住民らの主張を退けた。




  1. まず、本件判決は、口頭弁論終結以前の支出差し止めを求める部分のほか、被告千葉県水道局長が国土交通大臣に対し八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を違法に怠るとの主張、及び、被告千葉県知事らに八ッ場ダムに関し負担金等の支出命令をさせることの差し止めを求めた部分は地方自治法242条の2第1項所定の住民訴訟に該当しないとして却下した。
  2. 次に、本件判決は、㈰八ッ場ダムの利水については千葉県の行った将来の水道需要予測及び水源評価に不合理な点は認められない、㈪治水については千葉県が治水上の利益を受けることはまったくないとは認められない、㈫貯水池周辺の地滑り等の危険性については、危険性が放置されたままの建設事業であるという事実は認められないとし、国土交通大臣の納付通知に著しく合理性を欠くとは認められないので、本件支出命令が違法であるとはいえないとして請求を棄却した。

2) こうした本件判決の判断は、原告住民らの主張をまともに受け止めようとしないもので、行政が進める公共事業の無駄遣いを司法の立場でチェックしようとせず、むしろ無駄な公共事業を積極的に奨励するものにほかならない。

3) 本件判決は司法の役割を放棄した不当な内容であるから、原告らは東京高等裁判所へ控訴手続を行うとともに、他都県の住民訴訟の原告らとも手を携え、引き続き闘い続けることを表明する。 今後とも皆様のご支援をお願いしたい。

八ッ場ダムをストップさせる千葉の会原告団
八ッ場ダムをストップさせる千葉の会弁護団

八ッ場ダム東京裁判判決 

今日の八ッ場ダム住民訴訟東京地裁判決は、
門前払いではないものの、行政の裁量を無制限に認めるような、つまり、行政の浪費、ごまかしをチェックする司法の機能を放棄した、
「むしろ無駄な公共事業を積極的に奨励する」ような代物でした。(深澤洋子)

いやいや、ひどい判決でした。
「東京都は首都であるから、水不足や洪水被害の可能性に備えることは重要。」
弁護団の報告では、そんな論調のようです。
判決が先にあって、理由をこじつける、そんな低レベルの判決を出す。
司法改革を勝ち取らなければ・・・・。(遠藤保男)

この不当判決への抗議声明を下に掲載します。

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八ッ場ダム東京裁判判決に対する抗議声明
                            2009年5月11日

1 本日, 東京地方裁判所は八ッ場ダムに関する公金支出差止等請求住民訴訟に対する判決を下した。

判決は,原告の主張をまったく理解することなく,不当にも以下述べるように原告らの主張を退けた。
           記
(1) まず, 本件判決は, 口頭弁論終結以前の支払差し止めを求める部分のほか,被告東京都水道局長が国土交通大臣に対し八ツ場ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を違法に怠るとの主張, 及び,被告東京都知事らに八ツ場ダムに関し負担金等の支出命令をさせることの差し止めを求めた部分は地方自治法242条の2第1項所定の住民訴訟に該当しないとして却下した。

(2) 次に, 本件判決は,
㈰ 八ツ場ダムの利水については東京都の行つた将来の水道需要予測及び水源評価に不合理な点は認められない,

㈪ 治水については東京都が治水上の利益を受けることはまったくないとは認められない,

㈫ 貯水池周辺の地滑り等の危険性については,危険性が放置されたままの建設事業であるという事実は認められないとし. 国土交通大臣の納付通知に著しく合理性を欠くとは認められないので, 本件支出命令が違法であるとは言えないとして請求を棄却した。

2 こうした本件判決の判断は, 原告らの主張をまともに受け止めようとしないもので, 行政がすすめる公共事業の無駄遣いを司法の立場でチェックしようとせず. むしろ無駄な公共事業を積極的に奨励するものにほかならない。
3 本件判決は司法の役割を放棄した不当な内容であるから,原告らは東京高等裁判所へ控訴手続を行うとともに,他県の住民訴訟の原告らとも手を携え,引き続きたたかい続けることを表明する。
今後とも, みなさまのご支援をお願いしたい。


八ッ場ダムをストップさせる東京の会原告団
八ッ場ダムをストップさせる東京の会弁護団

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【八ツ場ダム訴訟、住民敗訴 都の負担金差し止め認めず】2009/05/11 17:47 【共同通信】

 国が多目的ダムとして建設を進める八ツ場ダム(群馬県長野原町)は不要で、事業費の一部を東京都が負担するのは違法だとして、都民約40人が都知事らに支出差し止めなどを求めた住民訴訟の判決で、東京地裁は11日、「支出は違法とはいえない」として、都民側の請求を退けた。都民側は控訴する方針。判決理由で定塚誠裁判長は「都の将来の水道需要予測や、ダム完成後の保有水源量の評価に不合理な点は認められない」と指摘。その上で「都が利水、治水上の利益を受けないと認める証拠はない」として、支出は適法と結論付けた。国土交通省によると、八ツ場ダムは2009年度中に本体工事に入り、15年に完成予定。利根川系流域の東京、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の6都県で、総事業費
約4600億円のうち半分以上負担する見込み。都の負担分は約870億円で、埼玉県の約952億円に次ぐ。都民側は「利根川水系の既設ダムなどにより、保有水源は過剰で、利水、治水上の必要性はなくなる」などと主張していた。